witch
家から出ると私は一目散に人影へと駆けていく。
曖昧だった人影の輪郭がくっきりし、更に近づけばぼやけていた人影の姿がはっきりとしていく。
そこに立っていたのは、華奢な体格の少女だった。
焦げ茶色の腰まであるロングヘアーに雪の様に真っ白な肌。
白い着物に黄色い帯。そうこの人は…。
「粉雪さん??」
私の声に少女が振り返る。薄茶の瞳と目が合う。
「うん?」
粉雪さんは怪訝そうな顔をして首をかしげる。
長い髪がさらりと揺れる。
「あぁ、やっぱり粉雪さんだ!」
私は安堵した声をあげる。なぜかは分からなかった。
でも、どこか人を安心させる雰囲気が彼女にはあった。
「ちょっとお話したいと思って来ました」
ぎこちない動きで粉雪さんに近づく。
目の前の池の鯉が優雅に通りすぎた。
「君って化け物の子だよね?時彦の知り合いの」
透き通るような甲高い声が黄昏時の静寂の中に響く。
その声はどこまでも美しかった。降りたてのきれいな雪の様に…。
「「化け物と契約してどっか行っちゃったんだよね?こまりって子」
粉雪さんが唐突にか細い声で漏らす。
その声は耳を澄まして集中しなければ聞こえないくらい、独り言に聞こえるくらい小さかった。
「はい、こまりは化け物と一緒に…」
「だよね、時彦から聞いたよ。ないとを殺そうとしてることも」
「何で…何でこまりは急にあんなこと言い出したんだろう?自分の欲望のために人を殺すなんて…!」
思い出すだけで涙が出てくる。あの日、私はこまりに殺されかけた。信じてた、たった一人の親友に…。
「リース=ルー」
聞き覚えのある名前に反応する。
その言葉は粉雪さんの口から出たものだった。
「え?リース=ルー?」
私は粉雪さんの言葉を反復する。
粉雪さんは素早く、そして深く頷いた。
「多分、そのこまりって子はリース=ルーに騙されてるんだと思う。あいつは自分の欲望のためになら人をどう利用しても平気なやつだから」
衝撃的な言葉が粉雪さんの口からこぼれる。
頭が展開に追い付かない。
「リース=ルーに騙されたんだ。時彦から聞いた。彼女がないとを殺そうとしている理由は永遠の美しさを手にいれるためだって」
粉雪さんの顔が歪んでいく。
「そうですけど、もし騙されてて永遠の美しさが手に入らなかったらないとくんが死ぬ意味がないような…」
「違うんだよ!手に入れちゃダメなんだ!あんなことなるくらいなら何も手に入らない方がましなんだよ!」
粉雪さんがこれ以上ないくらい大きな声で叫んだ。
空気の振動にあわせて、鼓膜が大きく振動した。
「ダメだよ、手に入れちゃ!だって、だって…」
「粉雪さん…??」
「だって…!手にいれたらこまりって子は化け物になっちゃうんだよ!?」
「…え?」
声にならない声が出た。
化け物になる??手にいれたら…?
「化け物をこの世に生み出したのはリース=ルーなんだよ?あいつ普通の人間に『憑依体』ってのを取り付けて、化け物にしちゃうんだよ?永遠の美しさは確かに手にはいるよ。でもそれって化け物は年をとらないし死なないからって事なんだよ??化け物になったら…化け物になったら…。化け物になったらあいつに操られて永遠に人殺しの道具として利用されちゃうんだよ!」
目の前で粉雪さんが泣きじゃくる。
自分はきっと間抜けな顔で立っているだろう。
知らなかった、そんなの。
化け物が人殺しの道具だなんて知らなかった。
リース=ルーが化け物を生み出したなんて知らなかった。
そして何よりも化け物はあいつに操られるの??
曖昧だった人影の輪郭がくっきりし、更に近づけばぼやけていた人影の姿がはっきりとしていく。
そこに立っていたのは、華奢な体格の少女だった。
焦げ茶色の腰まであるロングヘアーに雪の様に真っ白な肌。
白い着物に黄色い帯。そうこの人は…。
「粉雪さん??」
私の声に少女が振り返る。薄茶の瞳と目が合う。
「うん?」
粉雪さんは怪訝そうな顔をして首をかしげる。
長い髪がさらりと揺れる。
「あぁ、やっぱり粉雪さんだ!」
私は安堵した声をあげる。なぜかは分からなかった。
でも、どこか人を安心させる雰囲気が彼女にはあった。
「ちょっとお話したいと思って来ました」
ぎこちない動きで粉雪さんに近づく。
目の前の池の鯉が優雅に通りすぎた。
「君って化け物の子だよね?時彦の知り合いの」
透き通るような甲高い声が黄昏時の静寂の中に響く。
その声はどこまでも美しかった。降りたてのきれいな雪の様に…。
「「化け物と契約してどっか行っちゃったんだよね?こまりって子」
粉雪さんが唐突にか細い声で漏らす。
その声は耳を澄まして集中しなければ聞こえないくらい、独り言に聞こえるくらい小さかった。
「はい、こまりは化け物と一緒に…」
「だよね、時彦から聞いたよ。ないとを殺そうとしてることも」
「何で…何でこまりは急にあんなこと言い出したんだろう?自分の欲望のために人を殺すなんて…!」
思い出すだけで涙が出てくる。あの日、私はこまりに殺されかけた。信じてた、たった一人の親友に…。
「リース=ルー」
聞き覚えのある名前に反応する。
その言葉は粉雪さんの口から出たものだった。
「え?リース=ルー?」
私は粉雪さんの言葉を反復する。
粉雪さんは素早く、そして深く頷いた。
「多分、そのこまりって子はリース=ルーに騙されてるんだと思う。あいつは自分の欲望のためになら人をどう利用しても平気なやつだから」
衝撃的な言葉が粉雪さんの口からこぼれる。
頭が展開に追い付かない。
「リース=ルーに騙されたんだ。時彦から聞いた。彼女がないとを殺そうとしている理由は永遠の美しさを手にいれるためだって」
粉雪さんの顔が歪んでいく。
「そうですけど、もし騙されてて永遠の美しさが手に入らなかったらないとくんが死ぬ意味がないような…」
「違うんだよ!手に入れちゃダメなんだ!あんなことなるくらいなら何も手に入らない方がましなんだよ!」
粉雪さんがこれ以上ないくらい大きな声で叫んだ。
空気の振動にあわせて、鼓膜が大きく振動した。
「ダメだよ、手に入れちゃ!だって、だって…」
「粉雪さん…??」
「だって…!手にいれたらこまりって子は化け物になっちゃうんだよ!?」
「…え?」
声にならない声が出た。
化け物になる??手にいれたら…?
「化け物をこの世に生み出したのはリース=ルーなんだよ?あいつ普通の人間に『憑依体』ってのを取り付けて、化け物にしちゃうんだよ?永遠の美しさは確かに手にはいるよ。でもそれって化け物は年をとらないし死なないからって事なんだよ??化け物になったら…化け物になったら…。化け物になったらあいつに操られて永遠に人殺しの道具として利用されちゃうんだよ!」
目の前で粉雪さんが泣きじゃくる。
自分はきっと間抜けな顔で立っているだろう。
知らなかった、そんなの。
化け物が人殺しの道具だなんて知らなかった。
リース=ルーが化け物を生み出したなんて知らなかった。
そして何よりも化け物はあいつに操られるの??