witch
醜い欲と美しい涙
「ここは…?」
目の前に広がっていたのは鬱蒼と生い茂る木々だった。
深い森の奥。そんな表現がよく似合うような場所だ。
なぜこんなところに??空を見上げるとまだ少し明るかった空が真っ黒に染まっている。どのくらい時間が経ったんだろう?私は少し痛む頭をさすりながらさっきまでの出来事を思い出す。
私は神通家に遊びに行って、神通家の庭の池に人影を見つけて。で、その人影が粉雪さんで。あ、そうだ。リース=ルーとこまりの間柄の契約が危ない契約だって粉雪さんに言われて…。その後は??なぜか目が覚めたらここにいたんだ。記憶がない。
「あぁら、ようやくお目覚め?」
聞き覚えのある声に反応する。
声のする方にはこまりとあの塊がいた。
「…こまり」
私はよろめきながら立ち上がる。
さっきからの頭の痛みはこまりに殴られたのかもしれない。
「何でこんなところに?」
私が訪ねると、こまりは醜い笑みで答えた。
「あんたを人質に取ったのよ。こいつを黙らせるためにね」
こまりの後ろにいた塊が何かを地面に放り投げた。
「ないと!」
私の目の前に放り出されたのは気を失ったないとだった。
「ちょっと!あんたらなにしてんの!」
反射的に大声をあげる。
心の奥から何かが込み上げてきた。
それは怒りにも何かだった。
「ひどい、こんなの」
「まあまあ、無理強いじゃないわよ?ちゃんと許可はとったんだから」
「許可って何よ?」
「だから、ないとを殺す許可よ。魂を抜き取ってもいいって言う許可を。もちろん、ないと本人にね」
「それはあんたが私を人質にとったからだ」
「あぁら、ばれちゃった?」
「返せ!ないとを返せ!」
私はこまりに突っかかった。
こまりの冷酷な瞳に私が映る。
「返すわけないでしょ。ばーか」
もう、限界だった。
静かな森の中にバシンという音が響いた。
こまりが左頬を押さえている。
こまりを叩いた右の手のひらがヒリヒリと痛かった。
「こまり、残念だけどリース=ルーはあんたとの約束を守らないよ」
睨んだ。ただひたすら、こまりの目を睨んだ。
「リース=ルーはあんたを利用してる。化け物にしようとしてる。ないとを殺して魂を持ってたらあんたは化け物にされて永遠に人殺しの道具にされるだけ」
私の剣幕に圧倒されたのかこまりが先に目をそらした。
チャンスとばかりにそこを付く。
「あんたの望んでる永遠の美しさは手に入らない!手にはいっても永遠にリース=ルーの操り人形にされるだけ!しかも人殺しの道具にされる!それでもいいの?」
私は喉が痛くなるくらい大声でこまりに言葉をぶつけた。
どうか伝わってほしい。私の声を、言葉を聞いてほしい。
「嘘だ…」
こまりが発した第一声は拒絶する言葉だった。
頭の中から何かがスーっと引いていったのを感じた。
「…え?」
空気の抜けた、掠れた声が出た。
こまりに聞こえているかも分からない。
「嘘だ…すずねはそうやって嘘をついて私からないとくんを取り返そうとしている!」
とたん、私の体が宙に浮いた。
同時に頭に違和感を感じる。
「え?」
私は塊の大きな手に頭を掴まれ宙に浮かされていた。
「い!」
塊の掴む力がだんだん強くなり頭の違和感は痛みに変わっていく。
「このままあんたは殺されちまえ」
こまりの冷酷な声が響く。
まずい、本当にこのままじゃ殺される。
私は体を大きく揺らしてみたり、塊の手を叩いてみたりと、あらゆる手段を使ってこの状態から抜け出そうとした。
しかし、塊はびくともせず、私の体が解放されることはない。
あ、私はもうここで死ぬんだ。
ないとを殺すための人質に取られて、
ないとを脅すための道具として使われて、
こまりを止めるためにリース=ルーの本当の目的を話したけど信じてもらえず、
結果邪魔者になって殺される。
あぁ、反論しなければよかった?
何が間違いだった?
私、何か悪いことした?
死ぬ覚悟をした。
目の前に広がっていたのは鬱蒼と生い茂る木々だった。
深い森の奥。そんな表現がよく似合うような場所だ。
なぜこんなところに??空を見上げるとまだ少し明るかった空が真っ黒に染まっている。どのくらい時間が経ったんだろう?私は少し痛む頭をさすりながらさっきまでの出来事を思い出す。
私は神通家に遊びに行って、神通家の庭の池に人影を見つけて。で、その人影が粉雪さんで。あ、そうだ。リース=ルーとこまりの間柄の契約が危ない契約だって粉雪さんに言われて…。その後は??なぜか目が覚めたらここにいたんだ。記憶がない。
「あぁら、ようやくお目覚め?」
聞き覚えのある声に反応する。
声のする方にはこまりとあの塊がいた。
「…こまり」
私はよろめきながら立ち上がる。
さっきからの頭の痛みはこまりに殴られたのかもしれない。
「何でこんなところに?」
私が訪ねると、こまりは醜い笑みで答えた。
「あんたを人質に取ったのよ。こいつを黙らせるためにね」
こまりの後ろにいた塊が何かを地面に放り投げた。
「ないと!」
私の目の前に放り出されたのは気を失ったないとだった。
「ちょっと!あんたらなにしてんの!」
反射的に大声をあげる。
心の奥から何かが込み上げてきた。
それは怒りにも何かだった。
「ひどい、こんなの」
「まあまあ、無理強いじゃないわよ?ちゃんと許可はとったんだから」
「許可って何よ?」
「だから、ないとを殺す許可よ。魂を抜き取ってもいいって言う許可を。もちろん、ないと本人にね」
「それはあんたが私を人質にとったからだ」
「あぁら、ばれちゃった?」
「返せ!ないとを返せ!」
私はこまりに突っかかった。
こまりの冷酷な瞳に私が映る。
「返すわけないでしょ。ばーか」
もう、限界だった。
静かな森の中にバシンという音が響いた。
こまりが左頬を押さえている。
こまりを叩いた右の手のひらがヒリヒリと痛かった。
「こまり、残念だけどリース=ルーはあんたとの約束を守らないよ」
睨んだ。ただひたすら、こまりの目を睨んだ。
「リース=ルーはあんたを利用してる。化け物にしようとしてる。ないとを殺して魂を持ってたらあんたは化け物にされて永遠に人殺しの道具にされるだけ」
私の剣幕に圧倒されたのかこまりが先に目をそらした。
チャンスとばかりにそこを付く。
「あんたの望んでる永遠の美しさは手に入らない!手にはいっても永遠にリース=ルーの操り人形にされるだけ!しかも人殺しの道具にされる!それでもいいの?」
私は喉が痛くなるくらい大声でこまりに言葉をぶつけた。
どうか伝わってほしい。私の声を、言葉を聞いてほしい。
「嘘だ…」
こまりが発した第一声は拒絶する言葉だった。
頭の中から何かがスーっと引いていったのを感じた。
「…え?」
空気の抜けた、掠れた声が出た。
こまりに聞こえているかも分からない。
「嘘だ…すずねはそうやって嘘をついて私からないとくんを取り返そうとしている!」
とたん、私の体が宙に浮いた。
同時に頭に違和感を感じる。
「え?」
私は塊の大きな手に頭を掴まれ宙に浮かされていた。
「い!」
塊の掴む力がだんだん強くなり頭の違和感は痛みに変わっていく。
「このままあんたは殺されちまえ」
こまりの冷酷な声が響く。
まずい、本当にこのままじゃ殺される。
私は体を大きく揺らしてみたり、塊の手を叩いてみたりと、あらゆる手段を使ってこの状態から抜け出そうとした。
しかし、塊はびくともせず、私の体が解放されることはない。
あ、私はもうここで死ぬんだ。
ないとを殺すための人質に取られて、
ないとを脅すための道具として使われて、
こまりを止めるためにリース=ルーの本当の目的を話したけど信じてもらえず、
結果邪魔者になって殺される。
あぁ、反論しなければよかった?
何が間違いだった?
私、何か悪いことした?
死ぬ覚悟をした。