witch
私はゆっくり目をこまりの方へ向ける。
こまりは私と目を合わせた。
「こまり、あんた」
「何よ」
「本当は私に止めてほしかったんだね」
こまりがそわそわし始める。
私の予想が確信に変わった。
「だって、あんたないとが殺していいよって言ったのにまだ殺してないんだもん。ないとを殺す気なら私が眠っている間にないとを殺せばよかった。なのに、何で殺してないかって?それは、あんたには出来なかったんだ。人を殺すことが」
こまりは全身を震わせながら、薄ら笑いをしてきた。
「だって、だって」
「こまり?」
「だって、美しくないと誰も私を必要としてくれない」
必要としてくれない?
なんで?ただそう思った。
私はこまりを必要としてきた。
たった一人の親友として大切にしてきたのに。
「もういい、すずねを離して」
こまりはうつむいたまま塊に命令した。
私の体がゆっくり下降していく。
衝撃で足が痛くならないようにか優しく地面に下ろしてくれた。
「もういい、さよなら」
こまりは塊の腕に乗って、塊と共に夜の闇に消えていく。
その後ろ姿は儚く、弱々しくて小さく見えた。
こまりの肩は私の目に映らなくなるまで小刻みに震えていた。