witch
目をつむって火炎が私たちの体を包むのを待っているが、一向に炎が来ない。
おそるおそる目を開けると、塊の吐く炎前に何かが立ちふさがっていた。


白い着物に焦げ茶の腰まである髪。黄色の帯…。
「粉雪さん…?」

「だい…じょ…ぶ………?」
途切れ途切れになりながらも発せられた、温かい声。
粉雪さんはその顔に苦しみに歪んだ笑みを浮かべていた。

塊は粉雪さんを真っ黒になるまで焼き付くすと、炎を止め、私たちが入ったときに開けた窓から飛ぶように去っていった。



「ちょっと!あんた、しっかりしてよ!」
私の横ではこまりが必死に粉雪さんの体を揺すっている。
教室に残っていた、ももかちゃんも駆けつけてきた。



「大丈夫ですか??」
ももかちゃんは粉雪さんの横にしゃがむと泣き声で問いかけた。


「私は、幸せだよ」
粉雪さんは、この状況に合わない微笑を、優しくてどこまでも美しい笑みを浮かべて言葉を続けた。
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