困難な初恋
確実にクリアは近い。
だが、徐々に心を開いていってくれているのが身近で感じられる秋葉に対して、
ゲームの相手として接するのに限界は感じていた。
なぜかは自分の中でもはっきりしていないが、
純粋な生き物を騙すような、複雑な気持ちだった。
普通は付き合って2週間もすれば、帰り際や車の中で、さっさとキスを済ませてしまうのだが、
そもそも付き合った経験があるのか、キスもしたことがあるかどうかも分からない秋葉に対し、アプローチを迷ってもいた。
ただ、チャンスはすぐに訪れてしまった。
その日も残業で、俺の部署には誰も残っていなかった。
隣の部署をちらりとのぞくと、秋葉がいる。
湧き上がる嬉しい気持ちを抑えるように、
ゆっくりと帰り支度をし、隣の部署に寄る。
「宮川さん、お疲れさま」
後ろから声をかけると、疲れているがホッとした顔で振り向く。
その顔をしてくれるまで2ヶ月かかっている。安心した表情を見ると胸が苦しくなった。
「もう・・・帰りますか?」
聞いてくる秋葉に対し、周りに誰もいないこともあり、顔を近付けて、待っとくよ、とささやいた。
照れたのか、「会社で。やめてください。」とくるりと前を向こうとする。
秋葉は照れると耳が赤くなる。
赤くなった耳を見て、いたずら心がわいた。
「秋葉」
名前で呼ぶと、また咎めるような目でこちらを見る。
そのままイスをくるりと回した。
ちゅ
イスを固定したまま優しく唇に触れる。
秋葉は目を丸くして固まっていた。
彼女が動かないのをいいことに、ちゅ、ちゅ、とキスする。
そうしているうちに、触れていた唇が動いた。
少し唇を噛んでみる。
は、と秋葉の唇から息が漏れた。
あ。やばい。
ぐぅ、と下腹が苦しくなる。
そもそも。会社だし。
秋葉に至っては仕事中。
そうは思うものの、抵抗が無いことに自分が、身体が、喜んでいるのが分かる。
「あきは…、」
思ったより掠れてしまった自分の声にカッと顔が熱くなったが、
はむ、はむ、とキスを深くしていく。
ちろ、と奥から舌がこたえてきた。
秋葉らしい、控えめな動き。
そう思ったところで、カタ、と音がした。
バッと、突き飛ばすような勢いで秋葉が離れる。
いつの間にか秋葉の頭を支えながら覆いかぶさるようになっていた俺は、体制を崩しながら後ずさった。
無理な体制を支えていた手が机の上のボールペンに当たっただけのようだ。
「ごめん」
とっさに謝罪の言葉が出る。
秋葉といえば、こちらを見ながら、
少し乱れた息を抑えるように唇に指を当てていた。
その姿を見て、ざわ、という感覚を抑えながら、
少しもやっとしている自分に気付いた。
これ、初めてじゃないな。
え。この警戒心で、誰かいたってこと?男が?
付き合ってた?
俺にするみたいに、そいつに笑顔見せて?
見も知らない男に笑いかける秋葉の姿が目に浮かび、
我ながら情けないがカチンと固まる。
「会社で・・・やめてください」
表情を整えた秋葉がパソコンに向き直る。
「廊下で待ってるね」
冷静に立ち去ったつもりたが、平静を装えているだろうか。
秋葉、お前、冷静過ぎない?
廊下の自販機で買ったコーヒーをぐ、とあおった。
だが、徐々に心を開いていってくれているのが身近で感じられる秋葉に対して、
ゲームの相手として接するのに限界は感じていた。
なぜかは自分の中でもはっきりしていないが、
純粋な生き物を騙すような、複雑な気持ちだった。
普通は付き合って2週間もすれば、帰り際や車の中で、さっさとキスを済ませてしまうのだが、
そもそも付き合った経験があるのか、キスもしたことがあるかどうかも分からない秋葉に対し、アプローチを迷ってもいた。
ただ、チャンスはすぐに訪れてしまった。
その日も残業で、俺の部署には誰も残っていなかった。
隣の部署をちらりとのぞくと、秋葉がいる。
湧き上がる嬉しい気持ちを抑えるように、
ゆっくりと帰り支度をし、隣の部署に寄る。
「宮川さん、お疲れさま」
後ろから声をかけると、疲れているがホッとした顔で振り向く。
その顔をしてくれるまで2ヶ月かかっている。安心した表情を見ると胸が苦しくなった。
「もう・・・帰りますか?」
聞いてくる秋葉に対し、周りに誰もいないこともあり、顔を近付けて、待っとくよ、とささやいた。
照れたのか、「会社で。やめてください。」とくるりと前を向こうとする。
秋葉は照れると耳が赤くなる。
赤くなった耳を見て、いたずら心がわいた。
「秋葉」
名前で呼ぶと、また咎めるような目でこちらを見る。
そのままイスをくるりと回した。
ちゅ
イスを固定したまま優しく唇に触れる。
秋葉は目を丸くして固まっていた。
彼女が動かないのをいいことに、ちゅ、ちゅ、とキスする。
そうしているうちに、触れていた唇が動いた。
少し唇を噛んでみる。
は、と秋葉の唇から息が漏れた。
あ。やばい。
ぐぅ、と下腹が苦しくなる。
そもそも。会社だし。
秋葉に至っては仕事中。
そうは思うものの、抵抗が無いことに自分が、身体が、喜んでいるのが分かる。
「あきは…、」
思ったより掠れてしまった自分の声にカッと顔が熱くなったが、
はむ、はむ、とキスを深くしていく。
ちろ、と奥から舌がこたえてきた。
秋葉らしい、控えめな動き。
そう思ったところで、カタ、と音がした。
バッと、突き飛ばすような勢いで秋葉が離れる。
いつの間にか秋葉の頭を支えながら覆いかぶさるようになっていた俺は、体制を崩しながら後ずさった。
無理な体制を支えていた手が机の上のボールペンに当たっただけのようだ。
「ごめん」
とっさに謝罪の言葉が出る。
秋葉といえば、こちらを見ながら、
少し乱れた息を抑えるように唇に指を当てていた。
その姿を見て、ざわ、という感覚を抑えながら、
少しもやっとしている自分に気付いた。
これ、初めてじゃないな。
え。この警戒心で、誰かいたってこと?男が?
付き合ってた?
俺にするみたいに、そいつに笑顔見せて?
見も知らない男に笑いかける秋葉の姿が目に浮かび、
我ながら情けないがカチンと固まる。
「会社で・・・やめてください」
表情を整えた秋葉がパソコンに向き直る。
「廊下で待ってるね」
冷静に立ち去ったつもりたが、平静を装えているだろうか。
秋葉、お前、冷静過ぎない?
廊下の自販機で買ったコーヒーをぐ、とあおった。