困難な初恋
秋葉は思ったより早く、15分ほどで廊下に出てきた。
「お待たせしました」
口では殊勝にそう言うが、目は明らかにさっきのキスを責めている。

自分もちょっと流されたくせに。

にらみつける顔が可愛くて、ふっと笑って余裕を取り戻した。

エレベーターに並んで乗り、無言を破る。

「続き」

そう言うと、秋葉の身体が固くなるのが分かった。

「今日は金曜日だし」

ちらりとこちらを、見る。

「ゆっくり過ごしたいよね?」

にっこりと秋葉を見ると、やはり先程と同じくこちらを睨みながら、ただ、耳は赤く染まっていた。


会社から近いのは俺のマンション。
ということで、秋葉を、金曜日の夜に、マンションに連れ込むことに成功した。
駅で簡単なテイクアウトをして、テーブルに向かい合って食べる。

いつもは少しづつ話す秋葉が、今日はより言葉少なだ。

「ちょっとさ」

ちらりとこちらを見てくる。

「そんな警戒されると、俺も不安になるんだけど」

苦笑いを浮かべながら言うと、

「大丈夫です、」

と、何が大丈夫か分からないが、その一言でおそらく許可がおりたらしいことはわかった。

先にどうぞ、という俺の言葉にあまりにブンブン首を振るので、先にシャワーを浴びさせてもらった。
出てくると、ソファに座っていた秋葉が立ち上がり、
俺をじっと見上げる。

「なに?」

いつもはセットした髪がおり、無防備になるこの姿が自分は嫌いだ。大学生のように幼く見えてしまう。

「なんか、かわいいですね」

自分が思っていたことを言われ、
目を細めて「失礼じゃない?」と返した。
くすりと笑って、「お風呂、いただきます」と風呂場へ向かう。

あいつ、余裕取り戻しやがって。
緊張してきた自分をごまかすように、冷蔵庫を開けた。
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