困難な初恋
店を出て、成瀬とは逆方向だったので大通りで別れた。
よし。
次は、いよいよ秋葉だ。
正直に話そう。

このあとは全部上手く行きそうな気がした。

綺麗な三日月も、自分を応援してくれているように見える。


その時。

「松原サン」

後ろから呼びかけられ、振り向いた。
そこには、こちらを睨みつけて、純が立っていた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

話がある、と深刻な顔で言う純に連れられ、
喫茶店に入った。
「あのさ、あんまり回りくどく言うの得意じゃないからはっきり言うけど。」
「秋葉と、別れてくれない」

これまで親密にしてくれていた純の突然の言葉に驚く。
なんで、と聞き返すと、すぐに答えは返ってきた。

「隠すのも得意じゃないから言うけど、
 さっき、同じ居酒屋で飲んでたんだよ」

その言葉を聞き、サッと血が下がる感覚がする。
まさか。
「ゲームだったんでしょ」

まさかの偶然だが、純が飲んでいた部屋は俺達の隣の部屋だった。
連れが仕事の電話で離席をした間、
聞く気はなかったが隣の声が聞こえてきたのだと言う。

「話の流れから、なんとなくそういうゲームだなと思って。
今どき、ゲームなんかする奴いるんだと思って、
顔を見てやろうかと思ってたら、松原サンだからさ。」
びっくりしたよ。

そう話す純の顔を見ながら、
何をどう話すべきか、と考え、出た言葉は一つだった。
「秋葉には、俺から話させてくれないか。」

ギロリと純が顔をあげる。
「秋葉が許しても、別れてね」

その言葉にイエスとは返せず黙り込んでいると、
「あの子、結構、そういうの多いんだよ」
だからすぐそういうゲームだなってピンときちゃったんだけどね、と、話し始めた。
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