困難な初恋
「で、俊也、お前、次は誰いくの」
喫煙所で声をかけてきたのは、何の腐れ縁か大学も会社も一緒の友人、成瀬亮。
こいつもこいつで、切れ目なくゲームの誘いをしてくる。
成瀬もまた、何か満たされないものを感じているのかもしれない。
「おーい」
ぼーっと反応しなかった俺に、もう一度声をかけてくる。
「何?大丈夫、お前。仕事忙しいの?」
「いや、今月終わったらまぁ落ち着きそうだし。・・・で、またやんの?」
フーッと最後に煙を吹きながら、灰皿にタバコを突っ込む。
「当ったり前じゃん。俺らってさ、毎日毎日ストレスたまってるわけよ。やっぱそれを発散するもんがなけりゃ、人生潤いませんよ~?」
ニヤニヤしながら成瀬が顔を近づける。
顔をしかめて少し距離をとった。
「で、誰いくかって話?」
いやいやながら話にのってしまうのは、やはり俺も何か欠落しているのだろう。
成瀬は嬉しそうに笑みを浮かべてくる。
「こないだの受付の子も、お前、一瞬だったもんな。
やっぱ告られるまで、じゃだめだろ。もっと先。チューとか、その先も賭けようぜ」
「嫌だ。めんどくさい。」
即効で拒否する。こいつは簡単に言うが、告白させた後の後処理も、決して楽しいものではない。
何でと突っかかってくる子もいれば、納得出来ないと家の前で待ち伏せされていたこともある。
それを柔らかな笑顔で、穏やかなトークで丸め込み、円満に収めるのがどれほど大変か。
考えながら思った。もう、付き合いでこれを最後にしよう。