困難な初恋
今日は秋葉がウチに来る。
念入りに掃除をし、今日は食事まで準備した。
我ながら、これまでにない尽くす姿に呆れる。

ピンポン、とベルがなり、秋葉を迎え入れた。

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食事を終え(終始、おいしい、すごい、と喜んでくれた。かわいい。)、
二人でソファに並びテレビを見る。

タイミングが良いのか悪いのか、テレビでは「こんな女子は嫌われる!」というテーマで芸能人のエピソードが紹介されている。

こういう番組、あの子は見ないのかな。
見てても自分のこととは気付かないのか。

気付くと、思い出して少しニヤけてしまっていたらしい。
視線を感じて隣を見ると、秋葉がギロリとこちらを睨んでいる。

え、なに?

そう思った瞬間、突然膝の上に秋葉がのしかかってきた。

うぉぉぉ・・・なにこのご褒美!!

にやけながら、秋葉の顔を見ると、

「ね。何思い出してるの?」

えぇ?何もないよ、そう言いながら腰を優しく撫でる。拒否しない。

「澤田さんと給湯室でなにしてたの」

怒った顔のまま、秋葉が聞いてくる。
グワッと、嬉しすぎる気持ちが溢れそうだ。

「コーヒーのシミとってあげただけだよ。」

なに?珍しい。嫉妬?

そう聞くと、少し頬を染めて、「そうだよ」と目線を反らせた。

あー・・・可愛い

可愛いね。と実際に口に出して、キスをする。

だんだんと深くなり、秋葉の頭を掴んでソファに押し倒そうとしたところで。

ガバッと秋葉が起き上がった。

残念。

「それだけじゃないよね。戻ってきてから、すごく睨まれたけど」

そう言われ、この体制じゃ無理、冷静に話せない、と秋葉を隣に座らせる。

「宮川さんのこと好きなのかって」

秋葉の目が丸くなる。ま、あんだけアプローチしてたら気付くよね、と言い、
悪口のことを言おうか迷って口を噤む。

「私の悪口でも言ってきた?」

傷付くかと思ったが、思ったよりもあっけらかんとした顔で秋葉が言う。

んー、まぁ、そうだけど、と言って、

「大丈夫。倍返しにしといたよ」

そう言って秋葉の頭を撫でた。
あの子も、終始悪い子じゃないんだよ。
ちょっと自分を客観的に見れたら、変わると思うんだけど。
冷静にかばう姿が、秋葉らしかった。


でも、ありがと、とソファに深く身体をうずめ、
何か考えているようだ。

しばらくテレビの音が響き、
ぽつりと秋葉が口を開いた。

「松原さん、もし、良かったら、」
「私の親に会ってくれない?」
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