困難な初恋
「あぁ〜!!秋葉ちゃん、ほんとに久しぶりね!
遠くまで疲れたでしょ、ゆっくりして・・・」

そう言った秋葉の母は俺を見ると、
「あっらー!秋葉ちゃん!イケメン!!!」

と言い、お父さーん!と家の中に走っていってしまった。

取り残された俺と秋葉は顔を見合わせる。
ごめん、と恥ずかしそうに言う秋葉に、大丈夫、嬉しいよ、と微笑み、家の中に入った。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
秋葉の義母は、義父は、とても優しそうな人たちだった。
もう定年を迎えた義父は今は釣りにはまっているそうで、
今日も釣ってきた魚を出してくれると言う。

義母は、秋葉と俺を交互に見て、涙くんでしまう程の感極まりようだった。

お母さん、大げさだよ。
そういう秋葉も、困ったような、嬉しそうな顔をしている。

「もうすぐ大樹(だいき)が帰ってくるから、ちょっと騒がしくなるかもしれないけど。」

お母さんがそう言った瞬間、
ガチャ、ドタン、バタン!
玄関で騒がしい音がし、スーツ姿が居間に飛びこんできた。
「秋葉ちゃん、久しぶり・・・」

秋葉を見て、切ないような嬉しいような表情をしている。
弟の大樹は今大学四年生、少し前までは茶色かった髪を黒に染め、今日も就活だったそうだ。

俺を見ると、また切なそうな顔で、ペコリと頭を下げる。

「秋葉ちゃんを、宜しくお願いします。」

まだ早い、と父母二人に突っ込まれていた。
< 34 / 38 >

この作品をシェア

pagetop