困難な初恋
食事が終わると、秋葉と大樹は部屋にあがり、俺に見せるアルバムを選んでくれているようだった。

居間には3人きりになる。

辿々しく続いていた会話が途切れ、どうしたものか、と話題を探していると。

「秋葉は、会社では上手くやれてますか」

と、お父さんが口を開いた。
仕事も早く、評価されてますよ、と返すと、安心しつつも、これまでのことを話してくれた。

秋葉は前職は地元の銀行に就職したのだが、
上司や取引先との人間関係に苦戦し、なかなかうまく行かず、転職することになったという。

ちょっと男勝りなところもある子だから、良く思わない人もいたみたいで、とお母さんも話す。

養子として引き取ったのも小学生になってからということもあり、秋葉はどうしても壁を作ってしまっていたらしい。

言うこともよく聞き、成績もよく、いい子だったが、
どうしても、家の中でも、よそ行きの顔しか出来なかった。
下の大樹が生まれてからは、よりそれが強くなり。
自分で貯めたアルバイト代を使って、一人暮らしをすると言い出したとき、父も母も止めたそうだが、
硬い決意を変えることができなかったそうだ。

「初めて秋葉が連れてきてくれた男性があなたです。きっと、心から信頼できると思って連れてきてくれたのでしょう。」

信頼、のところで胸がズキッと痛む。
「いえ・・・自分もまだまだですが・・・」

本当に優しい、でも、人に弱みを見せるのが苦手な子なんです、
どうか宜しくお願い致します、
そう言って頭を下げる二人に、俺は居た堪れない気持ちで一杯だった。

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