困難な初恋
その後は、少しカオスだが楽しい時間だった。

二人が育ってきた施設でのエピソードや、小さな頃は意外と活発だったという秋葉の話も聞け、本人は恥ずかしそうにしていたが、俺はとても満足いく時間だった。

2時を回ったころには、純は完全に寝落ちして、片付けましょっか、という秋葉の言葉で、二人で片付けをしていた。

洗い場に並んで立ちながら、ぽつりぽつりと話をする。

「すみません、今日はほんとに」

また謝る秋葉に対し、いいよ、と心から言葉が出る。

「鈴木さん、面白い人だよね。」

「はい、小さい頃からこんな感じで、救われることも多かったんです」

穏やかな笑顔を浮かべながら話す秋葉を見る俺の目も、きっと穏やかな顔をしているだろうと自分で分かる。

洗い物も終わるタイミングで、もう一度、勝負に出てみた。

「で、さ、カフェで話してた件なんだけど」

秋葉がちらりとこちらを見て、困ったように目線を下げる。

「俺も正直、宮川さんのこと分かってるかと言われると、きっとまだ何もわかってないと思うけど、会社での仕事の姿勢とか、

あと、今日知ったこととか、鈴木さんから聞いた小さいころの話とか、
そういうの聞いて、純粋にいいなって、思ってるんだけど・・・」

 
真面目に告白なんてしたことがなかったため、最後、どうしても言葉が出てこない。

が、

「私、一緒にいても楽しくないと思いますけど・・・」

「それを判断するのは俺だからね。大丈夫だと思うけど」

「・・・」

だめか、どうだ、と、秋葉の方を完全に向きたいのを我慢して、片付けながら様子を伺う。

と、ぱ、と秋葉が顔を上げた。

「期待に添えないと思いますけど、よろしくお願いします」

このときの気持ちは、なんとも表現しにくい、心臓のギュッとなるような嬉しさだった。
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