あの駅でもう一度、君を待つ。


意識もしっかりしているし、何よりさっきまで見ていた駅の光景が今、はっきりと見えている。



右手に違和感を覚え、起き上がる。



私の手は、誰かに握られていた。



顔を覗くと、あのベンチで寝ていた彼だった。



どういうこと?
私は、私は……、自殺に失敗したの?
嘘でしょ……。



「どうして……?」



私の声は、空中へと消えていく。



また、電車のドアが開くと人が出てくる。ほとんどの人が気づかないでいたが、何人かは怪訝そうにこちらを見ていた。



彼は痛そうに顔をしかめていたが、やがて目を開けるとキッと私を睨んで言った。



「馬鹿じゃねえの?今、何しようとしてた?まさか、じさ–––」


「うそでしょ………やだ、そんな、いや……っ」


とにかく頭が真っ白だった。ショックで涙が止まらず、嗚咽が漏れる。息が苦しかった。



< 8 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop