凛々しく、可憐な許婚
18階は、この中層マンションの最上階だ。

ワンフロアに一軒のみとなっており、ベランダから出るとちいさな庭につながると尊が語った。

「鈴木先輩のお家はここなんですね。あまりに立派でビックリしました。,,,学園長の息子さんですから当然といえば当然なのでしょうけど」

有無を言わせず室内に連れ込まれた咲夜は、玄関のところに立ち尽くして呟いた。

尊は、冷蔵庫のところに行き、ペットボトルのお茶を2本取り出すと、そのうちの1本を咲夜に渡した。

「ありがとうございます」

ペットボトルを受け取り、お茶を口に含むと、咲夜は段々と周囲の景色が目に入るようになってきた。

「,,,!これ」

部屋の中に違和感を感じる。

これまで咲夜の自宅にあったはず物達が、あちこちに点在しているのだ。

「私の私物がどうしてここに?」

よく見ると、インテリアの一部や台所用品など、咲夜の使っていたものと同じものが存在感を示している。

「今日から君もここで暮らすんだよ。君の荷物は、兼貞さん,,,お義父さんが運ぶように手配したんだ」

「今日から一緒に暮らすんですか!?」

とうとう咲夜のキャパを越えた。

立ちくらみを感じてよろける咲夜を尊がしっかりと抱きとめる。

「やっとこうして抱き締めることができるんだ。頼むから怖がらないでほしい」

耳元で囁く甘くて低い声に、咲夜は体の力が抜けていくのを感じた。

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