凛々しく、可憐な許婚
「それじゃあ、私は部屋に戻りますね。今日はお疲れ様でした」

ソファから立ち上がり、お辞儀をして立ち去ろうとする咲夜の腕を引いて尊が呼び止める。

「俺の話を聞いてた?着替えたらここに戻ってくるよね?戻らないつもりなら、このまま話を続けるけど」

今は21時、就寝するには確かにまだ早い。

「わかりました。私もまだ混乱しているので、ぜひ鈴木先輩のお話を伺いたいです」

「何で今は"鈴木先輩"呼びなの?」

突然の尊の質問に咲夜が僅かに動揺する。

「えっと、私も高校時代から鈴木先生のことを存じ上げておりまして,,,。私達の学園にも鈴木先生のファンは多くて、私達の学年の子達は、鈴木先生のことを"鈴木先輩"って呼んで噂してましたから,,,つい、癖ですね。ごめんなさい」

「君も俺のことを噂してたの?」

尊がクスリと笑う。

「いえ、もっぱら私は聞き役でした」

「そう、残念。でも、鈴木先輩とか、鈴木先生とかややこしいよ。プライベートでは尊呼びにして。そうだ、俺、咲夜に"尊くん"って呼んでほしかったんだ。なんか仲良しって感じがするでしょ?」

首を傾げて微笑む、咲夜の癖を尊が真似をした。

綺麗な顔でやられると、確かに破壊力抜群だ。

「呼べません」

「却下。年も1つしか変わらないのに"尊さん"はおかしいし、嫌なら呼び捨てにしてよ」

「尊くん、にします」

即答する咲夜に尊が破顔した。

「結構,,,くるな。マジで嬉しい」

素直な王子に内心戸惑いながら、

「じゃあ、後で」

と、咲夜はリビングを後にした。


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