凛々しく、可憐な許婚
「コーヒーと紅茶、どっちがいい?」

「あ、私がやります」

「いいよ、俺がいれるからゆっくりしてて」

「じゃあ、一緒にやりましょう。私のお気に入りの紅茶があるんです。キッチン拝見させてもらいますね」

咲夜は、尊の許可をもらってキッチンに立つと、目星をつけていた棚を調べることにした。

キッチン用品は、尊が使っていたと思われる物に混じって、咲夜の物が機能的に配置されていた。

コーヒーメーカーの横にティーポットと紅茶の缶が数種類並べられていた。

その缶には、咲夜が好きなフレーバーティーが入っている。

中でもバレンタインシーズンに期間限定で売られるチョコレートフレーバーの紅茶がお気に入りだ。

咲夜が嬉しそうに紅茶の缶を手に取ると、尊がその隣に並んで咲夜の手元を除きこんだ。

「これは、チョコレートフレーバーのアールグレイです」

「珍しいね。俺にも飲ませてくれる?」

「もちろんです。ところで尊くん、ちょっと小腹が空きませんか?前日いただいたお菓子があるのでそれを出しますね」

パタパタと冷蔵庫に駆け寄る咲夜を見て、尊が笑みをこぼす。今日1日で随分と尊への警戒心が薄れているようだと嬉しくなった。

「これです。話題のスイーツショップのプチシュー。,,,もしかして、尊くんは甘いものは苦手ですか?」

「いや、好きだよ」

「わ、私もです」

告白めいた状況に二人は苦笑する。

「熱いから、こっちは俺が運ぶよ」

尊はティーポットとソーサー付きのティーカップをトレイにのせると、リビングのテーブルまで運んだ。

プチシューを持って咲夜がそれを追いかける。

その様子は、まるで仲の良い新婚カップルのようにも見えた。
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