凛々しく、可憐な許婚
「でもね、実家を出た咲夜さんを心配するあまり、道実さん所有のマンションを名目上"職員寮"にして咲夜さんを囲ってしまおうなんて、私はやりすぎだと反対したのよ。挙げ句のはてに尊までそのマンションに住んじゃうし」

「母さん、咲夜は実際にストーカー被害にあったことがあるんだ。咲夜のお祖父様やお義父様もうち所有のマンションを職員寮にして咲夜を住まわせる案には賛成してくれたんだ。何もやましいことはない」

友子はフフっと笑って、

「そうよね。10年も思い続けたんだものね。咲夜さんを少しでも近くで見守りたいっていう、ささやかな尊の願いくらい叶えてあげないとあの頃の尊が浮かばれなかったわ」

と言った。

その言葉からも、

咲夜は、本当にたくさんの人に守られてきたのだと実感し、心の中は感謝の気持ちでいっぱいになった。

「セキュリティは万全だし安心して過ごせました。,,,ただ職員寮にしては学校関係者の誰にも会わないな、とは思っていましたが"そういうわけだったのか"と昨日、尊さんから事情を聞いて納得しました」

咲夜が笑って首を傾げると、

友子は一瞬驚いた表情を見せ、直後には顔を真っ赤にして顔をそらせた。

「直視したら殺られるよ」

「本当に破壊力がすごいのね。思わず抱きつきそうになったわ」

尊の前以外では封印するはずの癖がまた出てきてしまった。

「尊さんに、闇雲に笑わないように、って注意されているんですけど、癖なのかなかなか抜けなくて,,,」

咲夜が困ったように言うと、

「まあ、尊のやきもちね。気にしなくていいわ。笑顔が可愛すぎて、尊はまた咲夜さんがストーカー被害に合わないかと気が気じゃないのよ」

尊は少し頬を膨らませて、頭を掻きながらそっぽを向いた。

「もういいだろ、母さん。これから咲夜の実家にも行こうと思っているんだ。そろそろ解放してくれないか?」

「そうだったわね。ところで、明日はウエディングドレスを見に行くんでしょう?私も一緒に行ってもいいかしら。咲夜さん」

「はい、是非お願いします」

二人は友子と、明日のお昼にブライダルショップで待ち合わせる時間を決めてから、尊の自宅をあとにした。

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