凛々しく、可憐な許婚
咲夜の実家は、尊の実家から10kmほど北に行った所にある。

閑静な住宅街で、明治時代に建てられたという同敷地内にある咲夜の祖父:義明の邸宅は、文化財としての価値もあるほどモダンな造りで美しい。

咲夜の父:兼貞と母:万智子が住む咲夜の実家は、現代的なモデルハウスといった造りであまり特徴はない。

「いらっしゃい。尊さん。ようやくお目にかかれて嬉しいわ」

「良く来たね。尊くんが息子になってくれる日が本当に来るなんて私も嬉しいよ」

兼貞も万智子もすでに尊と打ち解けており、義理の息子として受け入れているようだ。

「咲夜はこの通り、身持ちが固いだろう?ストーカーの件は別としても、浮いた話が全くなくて実は心配もしていたんだ」

「僕にとっては幸運なことでした」

「ああ、咲夜はともかく、尊くんには、女性からの誘いや結婚話がたくさん来ていたんだ。そんな誘惑にも負けずにお前との未来を選んでくれたんだ。咲夜、感謝しなさい」

「そうだったんですね。私のような者のためにありがたいです」

昨夜が微笑むと

「いえ、どこを探しても咲夜さん以上の方はいませんでしたよ。昨夜さんが僕のパートナーになって下さるのなら、これからもどんな苦労も厭いませんよ」

両親の前にした、甘いプロポーズのような言葉に、咲夜が赤面する。

「おやおや、感情が出にくい咲夜の照れた顔が見れた。さすが尊くんだな」

「咲夜にもようやく心を許せる男性ができて良かったわ」

二人の仲睦まじい様子を見て、咲夜の両親も安堵した様子だった。

「明日、お昼に家の母も一緒に咲夜さんのウエディングドレスを見に行こうと思っているんです。お義母様もご一緒にいかがですか?」

「いいわね。咲夜のウエディングドレス姿が見られるなんて夢のようだわ」

こうして、明日の予定は埋まっていき、尊と咲夜は、夕食の買い物をしてマンションに帰路につくのだった。
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