凛々しく、可憐な許婚
ジェラシー
「素敵な花嫁衣装ね」
「本当に。ほら、尊も並んで。まあ、二人ともモデルみたい」
今日は尊と咲夜、お互いの母親の四人でブリリアントラグーンホテルに来ていた。
ここは咲夜の父がCEOとして束ねるホテルの一つで、前々から二人の結婚式場として予約されていた場所だと知らされた。
ただし、尊がMBAを取得できない可能性もあったので、結婚式場の予約のことは、幹部のみが知るトップシークレット扱いとなっていた。
咲夜の祖父は老舗旅館を束ねる経営者だか、父の兼貞は、そこから業務を拡大し、洋風のホテル経営を中心に展開している。
しかし、今日は完全なプライベートでの来客。VIPだということは隠して来ていた。
何枚もの美しい衣装を言われるままに身につけ、尊と咲夜は両家の母親のきせかえ人形になっていた。
「咲夜ちゃん,,,?」
更衣室に現れたのは、咲夜の高校時代からの友人である鍋倉弥生(25)だった。
「弥生ちゃん!」
咲夜は、満面の笑みでウエディングドレスを身につけたまま弥生に近づいた。
弥生は短大を卒業後、咲夜の父が経営するホテルの入社試験を受け、このホテルのブライダル部門に配属されていた。
ブライダルショップの主任をしていると聞いていたが、年に2回程度の弓道部OG会でしか会わないため、咲夜は今日ここで弥生と再会する可能性を頭においていなかった。
「外に鈴木先輩がいたけど、まさか、鈴木先輩の結婚相手って咲夜ちゃんなの?」
弥生の表情が陰っているのを見て、咲夜はあることを思い出した。
高校時代、弥生も例に漏れず、他校の"鈴木先輩"に憧れていた一人だったのだ。
当時の会話では、
『ねえ、咲夜ちゃん、鈴木先輩って格好いいよね』
『そうだね』
『咲夜ちゃんもあんな風に格好いい男の人が好き?付き合いたいって思う?』
『ううん、私はそんなことないよ』
頻回に牽制をかけるような会話を投げ掛けられていたことを思い出した。
卒業後のOG回会でも、
『ねえ、咲夜ちゃん、時々、弓道の大会で鈴木先輩に会ったりするの?』
と聞かれたりしていた。
"あれは尊くんを想い続けてるってアピールだったのかな"
咲夜が混乱していると
「この間OG会で会ったときには、咲夜ちゃん、付き合っている人がいるとか、結婚するとか何も言ってなかったじゃない!』
"弥生ちゃん、怒ってる"
「それは、私も鈴木先輩が許婚だったって一昨日知ったからだし、結婚も三ヶ月後ってその時に言われたの。だから、嘘はついていないよ」
苦笑しながら告げる咲夜に
「おととい?それって無理矢理ってことなの?政略結婚?」
幸せいっぱいでウエディングドレスを探しに訪れているはずの花嫁候補に対して
"歯に衣きせぬ言葉の応酬だな"
と咲夜は思ったが、それほどまで、弥生は尊のことが好きなのかもしれないと思い直した。
「,,,咲夜さん、まだかしら?あら、その衣装もいいわね。早く尊に見せたいわ」
二人の気まずい雰囲気は、更衣室に顔を出した尊の母:友子の出現であやふやになった。
「この度は、おめでとうございます。ブライダル部門主任の鍋倉と申します」
「鈴木です。今後ともよろしくお願いしますね」
友子に腕を引かれながらも、
「弥生さん、また、後でゆっくり話しましょう」
と、咲夜は弥生に告げて更衣室をあとにした。
「本当に。ほら、尊も並んで。まあ、二人ともモデルみたい」
今日は尊と咲夜、お互いの母親の四人でブリリアントラグーンホテルに来ていた。
ここは咲夜の父がCEOとして束ねるホテルの一つで、前々から二人の結婚式場として予約されていた場所だと知らされた。
ただし、尊がMBAを取得できない可能性もあったので、結婚式場の予約のことは、幹部のみが知るトップシークレット扱いとなっていた。
咲夜の祖父は老舗旅館を束ねる経営者だか、父の兼貞は、そこから業務を拡大し、洋風のホテル経営を中心に展開している。
しかし、今日は完全なプライベートでの来客。VIPだということは隠して来ていた。
何枚もの美しい衣装を言われるままに身につけ、尊と咲夜は両家の母親のきせかえ人形になっていた。
「咲夜ちゃん,,,?」
更衣室に現れたのは、咲夜の高校時代からの友人である鍋倉弥生(25)だった。
「弥生ちゃん!」
咲夜は、満面の笑みでウエディングドレスを身につけたまま弥生に近づいた。
弥生は短大を卒業後、咲夜の父が経営するホテルの入社試験を受け、このホテルのブライダル部門に配属されていた。
ブライダルショップの主任をしていると聞いていたが、年に2回程度の弓道部OG会でしか会わないため、咲夜は今日ここで弥生と再会する可能性を頭においていなかった。
「外に鈴木先輩がいたけど、まさか、鈴木先輩の結婚相手って咲夜ちゃんなの?」
弥生の表情が陰っているのを見て、咲夜はあることを思い出した。
高校時代、弥生も例に漏れず、他校の"鈴木先輩"に憧れていた一人だったのだ。
当時の会話では、
『ねえ、咲夜ちゃん、鈴木先輩って格好いいよね』
『そうだね』
『咲夜ちゃんもあんな風に格好いい男の人が好き?付き合いたいって思う?』
『ううん、私はそんなことないよ』
頻回に牽制をかけるような会話を投げ掛けられていたことを思い出した。
卒業後のOG回会でも、
『ねえ、咲夜ちゃん、時々、弓道の大会で鈴木先輩に会ったりするの?』
と聞かれたりしていた。
"あれは尊くんを想い続けてるってアピールだったのかな"
咲夜が混乱していると
「この間OG会で会ったときには、咲夜ちゃん、付き合っている人がいるとか、結婚するとか何も言ってなかったじゃない!』
"弥生ちゃん、怒ってる"
「それは、私も鈴木先輩が許婚だったって一昨日知ったからだし、結婚も三ヶ月後ってその時に言われたの。だから、嘘はついていないよ」
苦笑しながら告げる咲夜に
「おととい?それって無理矢理ってことなの?政略結婚?」
幸せいっぱいでウエディングドレスを探しに訪れているはずの花嫁候補に対して
"歯に衣きせぬ言葉の応酬だな"
と咲夜は思ったが、それほどまで、弥生は尊のことが好きなのかもしれないと思い直した。
「,,,咲夜さん、まだかしら?あら、その衣装もいいわね。早く尊に見せたいわ」
二人の気まずい雰囲気は、更衣室に顔を出した尊の母:友子の出現であやふやになった。
「この度は、おめでとうございます。ブライダル部門主任の鍋倉と申します」
「鈴木です。今後ともよろしくお願いしますね」
友子に腕を引かれながらも、
「弥生さん、また、後でゆっくり話しましょう」
と、咲夜は弥生に告げて更衣室をあとにした。