凛々しく、可憐な許婚
「咲夜さんはスレンダーでスタイルもいいから、ウエディングドレスはAラインかエンパイアラインがいいわね。でも、咲夜さんは生粋の大和撫子だから、結婚式は神社で和装がいいんじゃないかしら?」

いつもはおしゃべりな咲夜の母:万智子が友子に押されている。

咲夜は、あーでもない、こーでもないと議論をする二人の母親に苦笑していたが、

尊の横に立ち、うっとりとその顔を見上げながら、打ち合わせ表を確認していく弥生を見て胸が痛むのを感じた。

弥生は、ストレートの黒髪でキリリとした美人顔の咲夜とは違い、小柄で可愛らしい容姿はフランス人形のようだった。

弥生が尊の恋人だと言われても遜色はないほど可愛いい。

"おとといまでの私なら、弥生ちゃんの気持ちを考えてあげることができた。だけど、私も尊くんが好きだど気づいてしまった"

居たたまれない気持ちになった咲夜は、

「これに決めます」

と、最後に着たエンパイアラインのウエディングドレスを指差し、更衣室に戻って着替えることを尊と二人の母親に伝えてその場を離れようとした。

「待って、最後に写真を撮りましょうよ」

咲夜の母:万智子に促され、タキシードを着ている尊と共にカメラマンのまえに立つ。

はしゃぐ母二人の横で、一人スマホを構える弥生が目に入った。

口元はぎゅっと閉じられ、目元は潤んでいるようにも見えた。

"撮った写真をどうするの?"

そんな言葉もかけられないまま、あっという間に写真撮影は終わってしまった。

「どうかした?」

「いえ、何も」

黙りこむ咲夜に、尊が囁く。

その様子を見つめる弥生の目には"嫉妬"が宿っているのを、咲夜は確かに感じていた。
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