凛々しく、可憐な許婚
その大会で、このはな学園は都大会の団体で優勝、全国大会で三位の好成績だった。
尊個人も全国大会で8位に入る好成績だった。
一方の新清涼女学院は、都大会の団体戦は5位で全国大会には出場できず。
咲夜は個人戦に残り、都大会も全国大会も優勝。
国体選手にも推薦されたが、大学進学のための勉強にも力を入れたかったため、国体参加は辞退した。
その後も、小さな大会に参加するとあちこちで尊を見かけた。
お互い、上位入賞して表彰されるものの、直接絡むことはなかった。
そんな中、内気な咲夜は、他の新清涼女学院の部員同様、陰から尊を見ては、心の中で
"カッコいい"
と呟いては満足していた。
時は経ち、
高校2年のインターハイ。高校3年生にとっては最後の大会。
咲夜は、試合の一週間前に自宅の階段から転げ落ち、手首を捻挫して大会には出られなくなるというアクシデントにみまわれた。
情けなくて、先輩にも申し訳なくて謝ってばかりいたが、お詫びにと簡単な記録係として試合にも立ち会わせてもらうことにした。
他校の生徒は、全国大会常連の光浦咲夜が不出場と聞いて驚いていたが、当の本人は、そんなに自分が注目されているとは思ってもいなかった。
"新清涼のクールビューティ"
"鋼の天使"
と、影で呼ばれていることも気づかない鈍ちんだったのだ。
色白で小顔。真っ直ぐの黒髪を高い位置で結わえてポニーテールにしている。その髪は肩甲骨まで届く長さだ。
美しい顔は気品に溢れ、立ち姿も凛としていて誰にも媚びない。
咲夜が通っているのが女子高ということもあり、男子生徒の妄想はどこまでも自分本意のものとなっていることを咲夜は知らなかった。
「新清涼の光浦さんだよね」
的中表を持って、更衣室から出てきた咲夜に他校の男子が声をかけてきた。
"だ、誰?"
女子高育ちの咲夜は、内心ビクビクしていたが、表情に出さずに少し微笑みを浮かべて
「はい、何かご用ですか?」
と首をかしげた。
「うわ、やべえ。すごい破壊力」
男子生徒の言葉に
"何のことかな"
と、咲夜は反対側に首をかしげた。
「手、怪我したの?」
その男子生徒が続けて質問する。
質問した男子生徒に再び目を向けると、男子生徒の周りには全部で五人いるようだ。
いつのまにか、咲夜は男子生徒達に囲まれている形になっている。
"なに、何の罰?"
咲夜は少し肩をすくめながらも、真っ直ぐに背筋を伸ばして彼らを見渡した。
すると、その中で一際オーラを放っているイケメン男子が目に入る。
",,,っと、鈴木先輩!"
驚きのあまり、咲夜は心の中で声を上げたが、言葉にはならず、もちろん表情は変わらず微笑んだまま固まっている。
尊は言葉を発せず、笑顔を浮かべて咲夜の右手首の包帯を見つめていた。
「えっと、先日、うっかり階段から転げ落ちまして。大したことはないんですが、しばらく弓を引くのはダメだってお医者様に言われたんです。他校の生徒さんなのにご心配ありがとうございました。試合頑張って下さい。それでは失礼します」
背筋を伸ばし、顔には変わらぬ微笑みをはりつけたまま、男子生徒達にお辞儀をすると、咲夜はその場を去った。
「やった、姫としゃべっちゃった」
そんな男子生徒の声が聞こえる。
尊と絡んだのは後にも先にもあの時が最後だ。きっと、尊は咲夜のことなど忘れているに違いない。
尊の弓を射る姿に憧れた一年間は、尊の部活引退と同時に幕を下ろしたのだった。
尊個人も全国大会で8位に入る好成績だった。
一方の新清涼女学院は、都大会の団体戦は5位で全国大会には出場できず。
咲夜は個人戦に残り、都大会も全国大会も優勝。
国体選手にも推薦されたが、大学進学のための勉強にも力を入れたかったため、国体参加は辞退した。
その後も、小さな大会に参加するとあちこちで尊を見かけた。
お互い、上位入賞して表彰されるものの、直接絡むことはなかった。
そんな中、内気な咲夜は、他の新清涼女学院の部員同様、陰から尊を見ては、心の中で
"カッコいい"
と呟いては満足していた。
時は経ち、
高校2年のインターハイ。高校3年生にとっては最後の大会。
咲夜は、試合の一週間前に自宅の階段から転げ落ち、手首を捻挫して大会には出られなくなるというアクシデントにみまわれた。
情けなくて、先輩にも申し訳なくて謝ってばかりいたが、お詫びにと簡単な記録係として試合にも立ち会わせてもらうことにした。
他校の生徒は、全国大会常連の光浦咲夜が不出場と聞いて驚いていたが、当の本人は、そんなに自分が注目されているとは思ってもいなかった。
"新清涼のクールビューティ"
"鋼の天使"
と、影で呼ばれていることも気づかない鈍ちんだったのだ。
色白で小顔。真っ直ぐの黒髪を高い位置で結わえてポニーテールにしている。その髪は肩甲骨まで届く長さだ。
美しい顔は気品に溢れ、立ち姿も凛としていて誰にも媚びない。
咲夜が通っているのが女子高ということもあり、男子生徒の妄想はどこまでも自分本意のものとなっていることを咲夜は知らなかった。
「新清涼の光浦さんだよね」
的中表を持って、更衣室から出てきた咲夜に他校の男子が声をかけてきた。
"だ、誰?"
女子高育ちの咲夜は、内心ビクビクしていたが、表情に出さずに少し微笑みを浮かべて
「はい、何かご用ですか?」
と首をかしげた。
「うわ、やべえ。すごい破壊力」
男子生徒の言葉に
"何のことかな"
と、咲夜は反対側に首をかしげた。
「手、怪我したの?」
その男子生徒が続けて質問する。
質問した男子生徒に再び目を向けると、男子生徒の周りには全部で五人いるようだ。
いつのまにか、咲夜は男子生徒達に囲まれている形になっている。
"なに、何の罰?"
咲夜は少し肩をすくめながらも、真っ直ぐに背筋を伸ばして彼らを見渡した。
すると、その中で一際オーラを放っているイケメン男子が目に入る。
",,,っと、鈴木先輩!"
驚きのあまり、咲夜は心の中で声を上げたが、言葉にはならず、もちろん表情は変わらず微笑んだまま固まっている。
尊は言葉を発せず、笑顔を浮かべて咲夜の右手首の包帯を見つめていた。
「えっと、先日、うっかり階段から転げ落ちまして。大したことはないんですが、しばらく弓を引くのはダメだってお医者様に言われたんです。他校の生徒さんなのにご心配ありがとうございました。試合頑張って下さい。それでは失礼します」
背筋を伸ばし、顔には変わらぬ微笑みをはりつけたまま、男子生徒達にお辞儀をすると、咲夜はその場を去った。
「やった、姫としゃべっちゃった」
そんな男子生徒の声が聞こえる。
尊と絡んだのは後にも先にもあの時が最後だ。きっと、尊は咲夜のことなど忘れているに違いない。
尊の弓を射る姿に憧れた一年間は、尊の部活引退と同時に幕を下ろしたのだった。