凛々しく、可憐な許婚
「どうしたの?やっぱり俺が嫌になった?,,,約束したよね。これからは一緒に寝てくれるって」

ソファの横に立つ咲夜の顔を、尊が覗き込む。

「尊くんが嫌になったわけじゃないの。ちょっと一人で考えたいことがあって」

「強引に話を進めてきた自覚はある。だけど、悩みがあるなら一人で悩むんじゃなくて俺に相談してほしい。ウエディングドレスを決める辺りから様子がおかしかったよね?何かあったんでしょう?」

尊は咲夜のことをよく見てくれている。

感情が出にくいと言われている咲夜も、尊と過ごすようになってから、段々とその仮面が剥がれつつある。

「まだ、自分の中でも混乱しているの。だから、言葉にはできない。今は少し一人になって考える時間が欲しいの」

「わかった。今日だけは一人にしてあげる。でも、明日からはまた一緒に居てくれる?」

「うん、ありがとう」

一人になって考えたところで、妄想が膨らむばかりで何も解決にならない。

お互いに腹を割って話すことが大切なのだと言うことを、咲夜はまだわかっていなかった。

尊に

「おやすみなさい」

を言って、一人自室のベッドに横になる。

見慣れた間取りの、以前と変わらぬ家具の配置が咲夜を安心させた。

スマホの着信音も聞こえない。

やっと一人になれた。

咲夜はスマホの目覚ましをセットすると、まぶたの上に右腕をのせて思考を整理する。

"なんかもう、疲れた"

結局何もわからない。咲夜の頭は早々に考えることを放棄して深い眠りに落ちていった。



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