凛々しく、可憐な許婚
"咲夜の態度がおかしい"
ウエディングドレスを選んでいる途中までは、ニコニコと笑っていた。
咲夜の表情が変わったのは、そう、あのブライダル部門の主任が現れてからだ。
「ブライダル部門の主任をやってます。鍋倉弥生と申します。あの,,,鈴木様、実は私、咲夜ちゃんと同じ新清涼女学院の弓道部で同期だったんです。今でも年に2回はOG会で会ってます」
エンパイアラインのウエディングドレスを着た咲夜に見とれていると、咲夜と一緒に更衣室から出てきた女性が、いつの間にか尊の横に立っていた。
ウットリとした視線を向けながら尊を見上げてくる弥生は、尊の好みではないが、小柄でかなり可愛い顔をしていた。
「そうですか。よろしくお願いします」
尊は、得意の営業スマイルを張り付けて淡々と言った。
「咲夜ちゃん、ウエディングドレス姿もとっても綺麗ですよね。鈴木先輩、いつから咲夜ちゃんのことが好きだったんですか?高校生の時からですよね」
ニコニコと笑う弥生に腹黒い何かを感じて、尊は呟いた。
「どうしてそう思うの?」
「だって、私達、鈴木先輩のファンだったんですよ。だから、鈴木先輩が誰を見つめていたかなんてすぐにわかりました。咲夜ちゃんについても、女学院の弓道部内外にファンが多くて、彼女が鈴木先輩のことを気にしていることはバレバレでした」
目を輝かせた弥生は、ブライダルの打ち合わせをそっちのけで話を続けた。
「実は私、同人誌をやってまして、ずっと二人をネタにして漫画や小説を書いてるんです。時には、咲夜ちゃんを男体化させて鈴木先輩とのBL(ボーイズラブ)に変換させたり。これが凄く人気があるんですよぅ、咲夜ちゃんは知りませんけどね」
グフフ、と笑う弥生に呆れながらも、尊は
「そう」
と答えるしかなかった。
「だから、ようやく二人の恋が実を結んだのを知って、我々ファンも大変嬉しいのですが、今日はいきなりお二人が結婚することを知って驚いてしまって、思わず咲夜ちゃんを問い詰めちゃいました」
頬を膨らませて怒った表情を作る弥生は、他の男からすれば可愛いと感じるのかもしれない。
「周りから固めるなんて、鈴木先輩も結構、腹黒かったんですね。みんなの咲夜ちゃんをまんまと手に入れるなんて、鈴木先輩じゃなかったら反感買ってますよ」
「ここまで10年かかってるんだ。君達にとやかく言われる筋合いはない」
尊の表情から微笑みが外れ、素の自分が顔を出しそうになった。
「いいですねえ、愛する女性を前にして、繕ってきた仮面が外れる。今度の作品に使わせていただきます」
一体、どんな作品なのか見てみたい気もしてきたが、弥生に付き合っていて、折角の咲夜のウエディングドレス姿を見逃すわけにはいかない。
「これに決めます」
咲夜の一言で、尊は我に返った。
着替えてくるという咲夜に、母親達が写真を撮ろうとすすめてきた。
笑顔を浮かべているが、咲夜の顔は冴えない。
一緒に過ごすようになってまだ3日だが、尊は随分、咲夜の表情が読めるようになってきていた。
カメラマンと二人の母親に混じって、弥生がスマホを構えていた。
『先輩、後で写真送りますから』
写真撮影が始まる前に言われた弥生からの言葉。
弥生は今、口元を歪めて目を潤ませ、笑いそうになるのを必死でこらえている。
"あれはオタクが妄想を拡大させて、萌えを感じているときの顔だ"
尊の友人にも同人誌を書いている男がいた。
このはな学園の弓道部出身で、そういえば、咲夜といつも一緒にいた女性(それは弥生ではなかったか?)をネタにして、百合漫画を書いていたはずた。
尊は呆れながらも、咲夜との初ツーショットに浮かれながら、弥生から送られてくる予定の写真に心を踊らせていた。
ウエディングドレスを選んでいる途中までは、ニコニコと笑っていた。
咲夜の表情が変わったのは、そう、あのブライダル部門の主任が現れてからだ。
「ブライダル部門の主任をやってます。鍋倉弥生と申します。あの,,,鈴木様、実は私、咲夜ちゃんと同じ新清涼女学院の弓道部で同期だったんです。今でも年に2回はOG会で会ってます」
エンパイアラインのウエディングドレスを着た咲夜に見とれていると、咲夜と一緒に更衣室から出てきた女性が、いつの間にか尊の横に立っていた。
ウットリとした視線を向けながら尊を見上げてくる弥生は、尊の好みではないが、小柄でかなり可愛い顔をしていた。
「そうですか。よろしくお願いします」
尊は、得意の営業スマイルを張り付けて淡々と言った。
「咲夜ちゃん、ウエディングドレス姿もとっても綺麗ですよね。鈴木先輩、いつから咲夜ちゃんのことが好きだったんですか?高校生の時からですよね」
ニコニコと笑う弥生に腹黒い何かを感じて、尊は呟いた。
「どうしてそう思うの?」
「だって、私達、鈴木先輩のファンだったんですよ。だから、鈴木先輩が誰を見つめていたかなんてすぐにわかりました。咲夜ちゃんについても、女学院の弓道部内外にファンが多くて、彼女が鈴木先輩のことを気にしていることはバレバレでした」
目を輝かせた弥生は、ブライダルの打ち合わせをそっちのけで話を続けた。
「実は私、同人誌をやってまして、ずっと二人をネタにして漫画や小説を書いてるんです。時には、咲夜ちゃんを男体化させて鈴木先輩とのBL(ボーイズラブ)に変換させたり。これが凄く人気があるんですよぅ、咲夜ちゃんは知りませんけどね」
グフフ、と笑う弥生に呆れながらも、尊は
「そう」
と答えるしかなかった。
「だから、ようやく二人の恋が実を結んだのを知って、我々ファンも大変嬉しいのですが、今日はいきなりお二人が結婚することを知って驚いてしまって、思わず咲夜ちゃんを問い詰めちゃいました」
頬を膨らませて怒った表情を作る弥生は、他の男からすれば可愛いと感じるのかもしれない。
「周りから固めるなんて、鈴木先輩も結構、腹黒かったんですね。みんなの咲夜ちゃんをまんまと手に入れるなんて、鈴木先輩じゃなかったら反感買ってますよ」
「ここまで10年かかってるんだ。君達にとやかく言われる筋合いはない」
尊の表情から微笑みが外れ、素の自分が顔を出しそうになった。
「いいですねえ、愛する女性を前にして、繕ってきた仮面が外れる。今度の作品に使わせていただきます」
一体、どんな作品なのか見てみたい気もしてきたが、弥生に付き合っていて、折角の咲夜のウエディングドレス姿を見逃すわけにはいかない。
「これに決めます」
咲夜の一言で、尊は我に返った。
着替えてくるという咲夜に、母親達が写真を撮ろうとすすめてきた。
笑顔を浮かべているが、咲夜の顔は冴えない。
一緒に過ごすようになってまだ3日だが、尊は随分、咲夜の表情が読めるようになってきていた。
カメラマンと二人の母親に混じって、弥生がスマホを構えていた。
『先輩、後で写真送りますから』
写真撮影が始まる前に言われた弥生からの言葉。
弥生は今、口元を歪めて目を潤ませ、笑いそうになるのを必死でこらえている。
"あれはオタクが妄想を拡大させて、萌えを感じているときの顔だ"
尊の友人にも同人誌を書いている男がいた。
このはな学園の弓道部出身で、そういえば、咲夜といつも一緒にいた女性(それは弥生ではなかったか?)をネタにして、百合漫画を書いていたはずた。
尊は呆れながらも、咲夜との初ツーショットに浮かれながら、弥生から送られてくる予定の写真に心を踊らせていた。