凛々しく、可憐な許婚
「どうしたの?やっぱり俺が嫌になった?,,,約束したよね。これからは一緒に寝てくれるって」

咲夜の表情には疲れが滲んでいる。

ここで無理強いをしても逆効果に違いない。

怒濤の3日間だったはずた。尊も咲夜の気持ちを尊重したい。

だか、この距離がこのまま日常化してしまうのだけは避けなければ。

咲夜は、自分の気持ちを語ろうともしないかわりに、他人の気持ちにも踏み込もうとはしない。

お義父さんいわく、

「じいさんに厳しくしつけられたから、甘えたり、気持ちを尋ねたりすることが苦手なんだよ。咲夜は。その事を理解してあげてほしい」

物音がしなくなった咲夜の部屋のドアをそっと開ける。

スマホを枕元に置いて、あどけない寝顔でスヤスヤと寝息を立てている姿は天使のように綺麗だ。

尊が口づけを落としても、咲夜は気づかない。

この二人の間の違和感をそのままにしていいはずはない。ようやく近づいて、心も体も自分のものになったと思ったのに、感じるこの距離はなんなんだ。

尊は、こっそりと咲夜のベッドに潜り込むと、細い咲夜の体を抱き寄せた。

「一人で悩むな」

尊は眠る咲夜の額にキスをすると、スマホをマナーモードに切り替えてから、自分も眠りについた。
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