凛々しく、可憐な許婚
「咲夜ちゃん、ご両親は元気かな?最近、実家に帰っている?」

突然、道実学園長が咲夜にプライベートの質問をしてきた。

高校時代にタイムスリップしていた咲夜は、いまだに尊に手を繋がれていることに気づいて一歩後ずさった。

そうして、手が自然に離れる距離をとったのだ。

尊がクスっと笑うのが聞こえた。

見上げれば、口角をあげて微笑んでいる。

"からかわれてるのかな?まさかね"

咲夜が進学した大学は、共学の有名国立大学だったため、男性の誘いのかわし方もそれなりに覚えることができた。

高校教師になり社会人となってからは、男性教師やバツイチの父兄からの誘惑、男子生徒のからかいもうまくかわせるようになっていた。

大学時代に一人だけ、同じ学部の先輩でしつこく言い寄ってくる人がいた。

あまりにもしつこいので両親に相談したら、その先輩と父が話をしたらしく、次の日からは咲夜の前には現れなくなった。

きっと、話し合いで解決してくれたのだろう。

その時から、咲夜は男性に好意を寄せられるのが苦手となり、未だに"彼氏いない歴"を更新中なのだ。

「さすがに手を振り払われたら、僕も傷つくな。もしかして嫌われた?」

「尊、こら、がっつくな」

"がっつくって何に?"

咲夜は得意の微笑み+首かしげのポーズを無意識にとる。

尊がその仕草を見て満面の笑顔を浮かべる。

突然の尊の笑顔にも謎が深まる。

「咲夜ちゃんはもしかしてご両親から何も聞いてない?」

道実学園長の言葉が咲夜を益々混乱させる。

「10年前から尊と君は許婚なんだよね」

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