凛々しく、可憐な許婚
「お疲れ様。光浦先生」

「お疲れ、咲夜姫」

幹事の3人が、咲夜に労いの言葉をかける。

「み、光浦先生、これどうぞ。僕は中等部の数学担当の佐々木といいます」

「飲み物もいかがですか?僕は、高等部の英語担当、前川です」

幹事の輪をかき分けるように、数人の男性教師が咲夜に駆け寄る。バイキング形式なので、食事と飲み物は自分で取りに行かねばならない。

皆、教育職に携わる人間なので、無茶なことはしないが、今日のこの瞬間だけが、数少ない咲夜と顔見知りになるチャンスと認識している。

「ありがとうございます」

咲夜から直接向けられる笑顔に撃ち抜かれる被害者多数。

しかし、そこは皆、自分と咲夜が部相応でないことは十分自覚しているので、少し話せば満足する者が多いのも確か。

吉高と鈴木が近寄ってくると、すかさず自分の席に戻る小心者も多かった。

「光浦先生、その袴も似合ってますね」

尊がそういうと、

「司会も上手くてさすが光浦先生です」

と吉高も誉める。

「ちょっと、鈴木先生と吉高先生は今日の主役なんだから、あそこで列をなして待っている女性教師と顔見知りになって下さい。咲夜姫のことはご心配なく」

そこに、幹事であるボーイッシュな原先生がすかさず割ってはいってきた。

原だけでなく、高等部幹事の深瀬と中等部幹事の迫は"吉高と鈴木、光浦、井上をできるだけバラして他の教師と交流をはからせるように"と上層部からお達しが出ているのだ。

この歓迎会の目的は、高等部と中等部の垣根を越えた広い範囲内での交流。

職員室と同じ事をやっていては関係性が広がらない。

ほとんど学園長の思い付きだが、イケメン、イケ女とお近づきになりたい教師達はそんな諸事情は知らず、本気でありがたいと思っていた。

かくして、学園長の思惑通りに歓迎会は終了。

たくさんの教師と会話をこなした咲夜は、会が終了する頃には精神的にすっかり疲れていた。

しかし、残念なことに今日は花金。

週末を楽しむべく、舞台は二次会へとシフトした。
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