凛々しく、可憐な許婚
「やっぱり咲夜は言葉が足りないな」

尊は咲夜の頭を撫でながら優しく言った。

「鍋倉さんには俺よりももっともっと好きな人がいる」

「えっ?誰?」

「咲夜だよ」

「私?」

咲夜の目がこれ以上にないくらい見開いている。

"子犬みたいでマジヤバイんだけど"

萌えすぎる咲夜の表情の変化に堪えられそうもないが、これだけは伝えておかねばならない。

「鍋倉さんは、咲夜のことが好きすぎて、咲夜のお父さんが経営するブリリアントホテルのブライダル部門に就職したらしいんだ。咲夜の結婚式をプロデュースしたくて、ずっと浮いた話を聞かされるのを待ってたのに、突然、ショップに来たと思ったら、3か月後に結婚と言われて慌てたらしい」

今度は動揺して眼球が泳いでいる。

フッと尊は笑うと

「ちなみに新清涼女学院の弓道部の同期のみんなは、高校時代から咲夜と俺をくっつけたがってたらしいよ。俺が君のことばかり見ているのも、君が俺のことを気にしているのもわかってたって」

と咲夜に告げた。

これまでの弥生の咲夜に対する言動や態度を思い返せば、すべてが辻褄が合う。

「尊くんのことが好きな訳じゃなくて、私を試してたってこと?」

「そうなるね」

尊は微笑んで混乱する咲夜を見つめた。

「ねえ、咲夜。悩んでいたことも蓋を開ければどうしようもないことだったりするでしょう?鍋倉さんも俺も、咲夜に何を聞かれたって怒ったりしない。だから、一人で溜め込まないで、相談してくれないかな?」

咲夜は真っ赤になって俯いている。

「難しいならアルコールの力を借りてもいいよ。酔った咲夜も,,,最高に可愛い」

尊は、そのまま咲夜の唇にキスを落とした。

何度も、何度も。

咲夜も今日は抵抗しなかった。

ぶちまけた本音も尊にあっさりと受け止めて貰えた。

伝えなければ伝わらない、そんな簡単なことから逃げていた。

「尊くんが好き、大好き」

咲夜を抱き締める尊の腕が、背中や腰を這う。

「俺の方が,,,もっとだ」

深いキスは何度も繰りかえされ、咲夜の首筋から鎖骨、胸元に移動する。

「俺を受け入れてくれる?」

咲夜が頷くのを待たずに、尊は咲夜の心と体を甘く翻弄していった。
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