凛々しく、可憐な許婚
「尊、久しぶり。早速、姫と再会したんだな」
二人が職員室に着くと、社会科教師の加藤雅臣(26歳)が二人に近づき、おもむろに話しかけてきた。
"早速って何?雅臣先生は何を知ってるの?"
雅臣は、咲夜が高校2年生の時に開催されたインターハイ地区予選会場で、更衣室から出てきた咲夜に声をかけたあの男子生徒だ。
咲夜がこのはな学園高等学校に着任した時には、すでに先輩教師としてここに勤務していて、
「あ、咲夜姫だ。相変わらず綺麗だね。あいつも心配だー」
と、話しかけてきたのだ。
"あいつって誰。初対面なのに馴れ馴れしいな"
顔は微笑んでいるものの、高校時代とは違い、男性に警戒心バリバリの咲夜は、初めこそ雅臣にいい印象を抱かなかった。
しかし、
親しみやすい表情や軽快な口調から、目の前の男性が、あのインターハイの時に声をかけてきた男子生徒だと気づくのにそう時間はかからなかった。
懐かしい思い出からか、雅臣が尊の友達だという邪な期待からか、二人は案外早期に打ち解けた。
雅臣は咲夜をからかうことはあっても、口説くことはしない。
それどころか、口説いてくる教師や父兄、生徒から守ってくれていたのだ。
"そういえば、雅臣先生ったら、鈴木先輩が学園長の息子であることとか、このはな学園高等学校の横浜校で働いていることについては一言も教えてくれなかったな。まあ、私も聞かなかったけど"
いつもよりも若干不服そうな顔をして、雅臣を咲夜が見つめていた。
「姫、なんか怒ってる?」
雅臣が、咲夜の顔を覗きこもうと近づいた瞬間、尊が二人の間に割って入る。
「お前の役割はここで終わり」
「なんだよ、尊。いいように利用して、もう俺は用済かよ」
雅臣が尊にヘッドロックをかける。
「近づかなければ、許す」
「ハイハイ、俺もやっと肩の荷が下りました。咲夜姫は綺麗だけど、僕にはかわいい唯李ちゃんがいますからね」
唯李とは雅臣が高校時代から付き合っている彼女で、職場の飲み会の帰りに雅臣を迎えにきた時に会って以来、咲夜も親しくさせてもらっている。
休みの日には、唯李に誘われてショッピングや食事に出かけることもあった。
尊と雅臣は相変わらず取っ組み合いのようなことをしながらじゃれあっていて、
二人のやり取りを見ていると、男性はいつまでも子供だな、と咲夜はぼんやりと考えていた。
"なんの話かわからないけど、仲直りしたみたいだし、私は仕事をしよう"
咲夜は二人に背を向けると、自分のデスクに向かって歩きだした。
二人が職員室に着くと、社会科教師の加藤雅臣(26歳)が二人に近づき、おもむろに話しかけてきた。
"早速って何?雅臣先生は何を知ってるの?"
雅臣は、咲夜が高校2年生の時に開催されたインターハイ地区予選会場で、更衣室から出てきた咲夜に声をかけたあの男子生徒だ。
咲夜がこのはな学園高等学校に着任した時には、すでに先輩教師としてここに勤務していて、
「あ、咲夜姫だ。相変わらず綺麗だね。あいつも心配だー」
と、話しかけてきたのだ。
"あいつって誰。初対面なのに馴れ馴れしいな"
顔は微笑んでいるものの、高校時代とは違い、男性に警戒心バリバリの咲夜は、初めこそ雅臣にいい印象を抱かなかった。
しかし、
親しみやすい表情や軽快な口調から、目の前の男性が、あのインターハイの時に声をかけてきた男子生徒だと気づくのにそう時間はかからなかった。
懐かしい思い出からか、雅臣が尊の友達だという邪な期待からか、二人は案外早期に打ち解けた。
雅臣は咲夜をからかうことはあっても、口説くことはしない。
それどころか、口説いてくる教師や父兄、生徒から守ってくれていたのだ。
"そういえば、雅臣先生ったら、鈴木先輩が学園長の息子であることとか、このはな学園高等学校の横浜校で働いていることについては一言も教えてくれなかったな。まあ、私も聞かなかったけど"
いつもよりも若干不服そうな顔をして、雅臣を咲夜が見つめていた。
「姫、なんか怒ってる?」
雅臣が、咲夜の顔を覗きこもうと近づいた瞬間、尊が二人の間に割って入る。
「お前の役割はここで終わり」
「なんだよ、尊。いいように利用して、もう俺は用済かよ」
雅臣が尊にヘッドロックをかける。
「近づかなければ、許す」
「ハイハイ、俺もやっと肩の荷が下りました。咲夜姫は綺麗だけど、僕にはかわいい唯李ちゃんがいますからね」
唯李とは雅臣が高校時代から付き合っている彼女で、職場の飲み会の帰りに雅臣を迎えにきた時に会って以来、咲夜も親しくさせてもらっている。
休みの日には、唯李に誘われてショッピングや食事に出かけることもあった。
尊と雅臣は相変わらず取っ組み合いのようなことをしながらじゃれあっていて、
二人のやり取りを見ていると、男性はいつまでも子供だな、と咲夜はぼんやりと考えていた。
"なんの話かわからないけど、仲直りしたみたいだし、私は仕事をしよう"
咲夜は二人に背を向けると、自分のデスクに向かって歩きだした。