凛々しく、可憐な許婚
忍び寄る罠
月曜日、咲夜と尊が別々に出勤すると、職員室の教師の様子がおかしい。
咲夜を見つけた英語教師の田村美雪が慌てて駆け寄ってくる。
「ちょっと光浦先生、噂は本当ですか?」
咲夜はキョトンとして首を傾げた。
「なんの噂ですか?」
「(くっ、可愛い!)、、、吉高先生のことですよ。おつきあいされてるんでしょう?」
咲夜は驚いて腰を抜かしそうになった。尊と一緒に暮らすようになってから、咲夜の表情は随分豊かになってきている。
「そ、そんなわけありませんよ。どなたからお聞きになったんですか?」
「歓迎会の後の二次会で、光浦先生と吉高先生が仲良くカウンターで飲んでたって。それにいつも礼儀正しい光浦先生が吉高先生の肩に寄りかかったとか。咲夜先生が店を出てすぐに吉高先生も出ていったっていうし、二人で消えたんじゃないかと噂になってますよ」
と、いうことはあの場にいた誰かが噂を流したと言うことだろう。
実際は、尊もその場から消えたはずだが、その事はひとまず話題になっていないようだ。
尊に腹をたて、酔っぱらって調子に乗ったとは言えず、咲夜は黙りこんだ。
「否定しないってことは本当なんですね?それに、その左手の指輪どうしたんですかぁ!」
目敏い田村に指輪を見つけられ、咲夜は慌てて隠す。
「まさか、吉高先生に貰ったんですか?」
「ち、違います。私には婚約者がいるんです。吉高先生ではありません」
二人のやり取りに周囲の教師も興味津々だ。中には婚約者の存在を知って涙ぐむ男性教師もいる。
吉高はニコニコ笑っているだけで何も言ってくれない。
「へえ、婚約者がいるのに吉高先生にも言い寄るなんて、案外、光浦先生ってビッチなんですね」
咲夜から1つあけた席、尊の隣のデスクにいた巨乳小悪魔系の井上由利香が、挑発するように呟いた。
「ちょっ、井上先生、ビッチはスラングですよ。いくらなんでも教師が口にする英単語ではありません。光浦先生にも失礼でしょ」
「あら、失礼。フラフラしてるから、手にしているものに執着がないのかと思ってました。私なら余所見なんてしませんけど」
明らかに井上は咲夜を挑発している。井上が尊に気があるのは明らかであるし、優柔不断な態度の咲夜を牽制しているのかもしれない。
しかし、咲夜と尊が婚約していることを井上は知らないはずだ。なのに井上は何をこんなに怒っているのだろうか?
"もしかしたら吉高先生のことを好きなのかな"
担任と副担任が夫婦では何かと問題になり兼ねないからと、咲夜と尊の婚約の件は内緒にしてほしい、と学園長から言われている。
なんと言い返せばいいのかわからずに咲夜が黙っていると、尊が遅れて職員室に入ってきた。
「どうかしたんですか?」
「鈴木先生!聞いてくださいよ。光浦先生、婚約者がいるのに吉高先生にも色目を使ってるんですよ」
井上が上目遣いに尊に近づき、体をベッタリと尊に密着させて囁いた。
咲夜はいたたまれなくなって目をそらした。
「その事情を婚約者も知っているなら問題ないんじゃないですか?ねえ、光浦先生」
「は、はい」
「そして、井上先生、余り近づきすぎないで下さい、僕もお付き合いしている彼女に勘違いされたくありませんので」
厳しく言い放った尊に唇を膨らませて甘えた表情を見せる井上はちっとも堪えていないようだ。
「私は諦めませんから」
そう言ってきびすを返した井上からは何か不穏な様子を感じた。
咲夜を見つけた英語教師の田村美雪が慌てて駆け寄ってくる。
「ちょっと光浦先生、噂は本当ですか?」
咲夜はキョトンとして首を傾げた。
「なんの噂ですか?」
「(くっ、可愛い!)、、、吉高先生のことですよ。おつきあいされてるんでしょう?」
咲夜は驚いて腰を抜かしそうになった。尊と一緒に暮らすようになってから、咲夜の表情は随分豊かになってきている。
「そ、そんなわけありませんよ。どなたからお聞きになったんですか?」
「歓迎会の後の二次会で、光浦先生と吉高先生が仲良くカウンターで飲んでたって。それにいつも礼儀正しい光浦先生が吉高先生の肩に寄りかかったとか。咲夜先生が店を出てすぐに吉高先生も出ていったっていうし、二人で消えたんじゃないかと噂になってますよ」
と、いうことはあの場にいた誰かが噂を流したと言うことだろう。
実際は、尊もその場から消えたはずだが、その事はひとまず話題になっていないようだ。
尊に腹をたて、酔っぱらって調子に乗ったとは言えず、咲夜は黙りこんだ。
「否定しないってことは本当なんですね?それに、その左手の指輪どうしたんですかぁ!」
目敏い田村に指輪を見つけられ、咲夜は慌てて隠す。
「まさか、吉高先生に貰ったんですか?」
「ち、違います。私には婚約者がいるんです。吉高先生ではありません」
二人のやり取りに周囲の教師も興味津々だ。中には婚約者の存在を知って涙ぐむ男性教師もいる。
吉高はニコニコ笑っているだけで何も言ってくれない。
「へえ、婚約者がいるのに吉高先生にも言い寄るなんて、案外、光浦先生ってビッチなんですね」
咲夜から1つあけた席、尊の隣のデスクにいた巨乳小悪魔系の井上由利香が、挑発するように呟いた。
「ちょっ、井上先生、ビッチはスラングですよ。いくらなんでも教師が口にする英単語ではありません。光浦先生にも失礼でしょ」
「あら、失礼。フラフラしてるから、手にしているものに執着がないのかと思ってました。私なら余所見なんてしませんけど」
明らかに井上は咲夜を挑発している。井上が尊に気があるのは明らかであるし、優柔不断な態度の咲夜を牽制しているのかもしれない。
しかし、咲夜と尊が婚約していることを井上は知らないはずだ。なのに井上は何をこんなに怒っているのだろうか?
"もしかしたら吉高先生のことを好きなのかな"
担任と副担任が夫婦では何かと問題になり兼ねないからと、咲夜と尊の婚約の件は内緒にしてほしい、と学園長から言われている。
なんと言い返せばいいのかわからずに咲夜が黙っていると、尊が遅れて職員室に入ってきた。
「どうかしたんですか?」
「鈴木先生!聞いてくださいよ。光浦先生、婚約者がいるのに吉高先生にも色目を使ってるんですよ」
井上が上目遣いに尊に近づき、体をベッタリと尊に密着させて囁いた。
咲夜はいたたまれなくなって目をそらした。
「その事情を婚約者も知っているなら問題ないんじゃないですか?ねえ、光浦先生」
「は、はい」
「そして、井上先生、余り近づきすぎないで下さい、僕もお付き合いしている彼女に勘違いされたくありませんので」
厳しく言い放った尊に唇を膨らませて甘えた表情を見せる井上はちっとも堪えていないようだ。
「私は諦めませんから」
そう言ってきびすを返した井上からは何か不穏な様子を感じた。