主任、それは ハンソク です!
とぼけた風にそういうと、彼女は私を見ながら意味深に笑って、自分と主任との距離をまた近づけた。
主任の肩に手をかけると、思わせぶりに主任の耳元で何かを囁く。
私だけじゃない。ドアの向こうの人達も、固唾をのむのが分かった。
ただ、その後の主任が、半眼で蔑むようなリアクションだったから、ちょっとだけ、ホッとした。たぶん、ドアの向こうも。
「そんじゃ、また近いうちにね。ヨーコちゃん」
そういうと、彼女は何か悪巧んでそうな微笑みを私に投げつけて、主任と二人で部屋を出た。
それと同時に、廊下がにわかにガタガタとうるさくなった。