主任、それは ハンソク です!

 ただ、私自身、昔からそんな環境で育ってきたから、多かれ少なかれ皆こういうものなのかな、なんてのんきに構えていたのも事実。

 でも、私の世界が内から外に向かっていくにつれて、それが普通でもなんでもないことがわかってきて、でもだからと言って、あえてそれを正すつもりはなかった。

 ううん、違う。

 正すという発想すら思い付きもしなかった。

 主任の言葉を借りれば、刷り込み、なのかな。そういえば、主任もよく洗脳とか刷り込みって言葉を使う。もしかすると、主任も結構ハードな生活環境だったのかも。

「……刷り込み、かぁ」

 さっき見せられたお見合い相手は、私と干支が二回り以上も上の人だった。三人兄弟の三男坊だから婿入りしても問題ないらしい。
 見た感じ年相応な年配の人で、勤め先が逸乃畠百貨店。祖父が「お前を連れまわす、あんな弱小スーパーの店員とは格が違う。地元の一流企業の係長だ」なんていい放つものだから、ついムキになってしまった。

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