主任、それは ハンソク です!
* * *
「……あの、今なんて?」
「ですから、得野さんは週明けから部署が移動になりますから」
次の日。派遣会社の担当さんの電話に、私は思わず息を飲んだ。
「わ、私、何かまずい事でもっ」
いえいえ、という電話の声は極めて明るい。だとすると、またいつものパターン。便利屋さんに舞い戻るのだろうか。
私の所属する派遣会社には仕事内容の選択肢なんてものはない。
今の仕事は事務仕事全般のアシスト。社内の電子化に伴って、諸々の契約書類の作成や、社内データベースの入力作業や社員の出張手配などのいわゆる純粋な事務系業務で、かれこれ半年、同じ事を続けている。
正直、これは奇跡だ。
今まで派遣された先はどこも事務職と言いながら、その実は最初だけ。一か月もしない内に、所内の水回りやトイレの清掃、お茶くみに社員の極めて個人的な買い出し、果ては倉庫の整理など体力系雑務に業務内容がシフトしていく。
ひたすら大量のスタンプ押しとシュレッダー掛けばかりの所もあったし、そもそも自分の席も無いような職場が基本だった。