主任、それは ハンソク です!
主任の不意打ちのような一言に、私の体がギクリと反応した。多分、顔色も無い、かもしれない。
「よ、よてぃ……」
「いや、いい。なんでもない、忘れてくれ」
そう言い放つ主任は、あからさまに苛つきながらため息を吐く。
つい、涙がこぼれそうになったから、慌てて顔を車窓に向けて、何とかその場をやり過ごした。
* * *
何だか社内がざわついている。お昼休みはとっくに過ぎているのに。
「何か、あったんですか?」
ちょうど近くにいた久住先輩を捕まえると、彼女の顔つきがぱぁっと明るくなった。
「うわ、グッドタイミング! みんなが君を待っていた!」
その言葉とほぼ同時に、総務課長があわあわしながらこちらに向かってきた。
「と、得野君っ、ちょっと、いいかな?」
「は、はいっ」