主任、それは ハンソク です!
「ああいう大事な事は、もっと早くに言うべきだわ。社会人として非常識極まりないっ。しかも、貴方の派遣先は全くもって知らないっていうじゃないのっ」
釘崎主任が低い声音で私に囁く。ああ、やっぱり予感的中。
「く、釘崎くん、ここじゃあれだから、場所を変えようか、ね?」
滝のような汗を流しつつ総務課長がそういうと、返事の代わりに、釘崎主任は鋭い眼光を私と課長に向けた。
*
「いやぁ、今日の釘崎女史は、またひと際怖かったねぇ~」
いつものファーストフード店のいつもの場所で、久住先輩は飄々と二階建てバーガーを拳でつぶしつつ、楽し気にそう嘯いた。
他人事だから楽しめるのはわかるけど、当事者のこちらはもう、消えてしまいたい。
「タッチの差だったのよ。いや、ホントに。私が出てたら、また適当に捌いてたんだけど、も、……ねぇ?」
祖父がまた、会社に電話をしてきたらしい。しかも、今度は本丸の釘崎主任がその電話を取ってしまったため、この騒ぎになってしまった。
――確かに、おめでたい事だけれど、だからといって、もう明日にでも辞めますっていうのは、常識を疑わざるを得ないわよ。