主任、それは ハンソク です!
絵に描いたような怒り方だけど、何だかそれがまた妙に可愛らしく感じる。ふふっ、と横から小さな笑い声が聞こえた。多分、美知留さんも同じみたいだ。
「ヨーコさん、ほんっとうにごめんなさいっ! それって、わざとなんです」
「……わざと?」
ふむふむと小動物的よろしく、チコたんが頭を上下させる。
「確かにあたしは、統括副部長の直属の部下ではありましたよ。でもですね、あたしをそこに引っ張り出したのは、他でもない、カジタツさん本人なんですよ」
私と美知留さんの頭の上に、大きなクエスチョンマークが浮かび上がった。
「カジタツさんは自分の毎日を面白可笑しくしたいがためだけに、あたしを巻き込んだんですよ。あたしは母のような家事の達人になりたくて、母の後を継ぎ、清廉社ビルメンテナンスの家事代行サービス部門目指して、一清掃員からコツコツ頑張ってたのにぃ……」
美知留さんと思わず固唾をのむ。何が、何が起こったの? チコたんっ。
「ビクビクあうあうしてるあたしが面白いってだけで、清伝堂企画部統括室付けの秘書に、引きずり出しやがりましてねっ」
「いきなり、それって、すごいかも」
美知留さんがちょっと戸惑いつつも、感嘆した。