主任、それは ハンソク です!
久住先輩には、相変わらず都合よく使われてるなぁ、なんて言われてしまったけど、私にしてみればむしろありがたいくらい。
今までも散々、家で料理はさせられてきたけれど、美味しいという言葉は全く聞いたことがなかった。だから、自分の料理が正直なところ、上手いのか下手なのかは分からない。
でも、少なくとも彼の口にはあっているようだから、これでいいのかな。
ただ、一つだけ納得できないのが。
東吾さんの中では、初めて彼に振る舞ったひどい手抜き料理の「カツ皿」が、よりにもよって私の作る料理で一番美味しいものになってしまっていること。
これを何としても別の料理に変えるのが、目下の目標になってる。
「あー、うまかった。ヨーコさんの料理はやっぱり、何食べても外れがないな」
綺麗に平らげたお皿を前に、笑ってそういう彼の口元が少しだけ赤く染まっていた。
「東吾さん」
彼の口の端に、私は思わず指を伸ばす。