主任、それは ハンソク です!
同意はするけど、気持ちはわかる。
なぜなら、正攻法で彼女に接触すれば、周りから冷かされたり馬鹿にされたりするのは目に見えている。ライバルだってきっと多いから、女子以上に陰湿な足の引っ張り合いも起こる。
そして何より一番厄介なのが、表向きクラスで人気の女子たちの存在だ。
ここの対処法を見誤ると、今度は彼女らから、彼女が『本当のいじめ』に遭いかねない。だから絶対、あからさまな好意を見せるわけにはいかない。でも、やっぱり気にはしてほしい。その落としどころが『いぢり』だ。
男子も馬鹿なりに策は練っているのだ。ただ、結局は馬鹿だから結果が伴わないのだが。
* * *
「とりあえずこの部屋、自由に使ってくれ」
振り返りながらそう言うと、彼女が黒目勝ちな瞳を驚いたように真ん丸く見開いた。
「……そうか、確かに何もないな。本棚とかテーブルとか、明日買ってくるか」
「あ、あのっ」
なぜか必死な形相で、彼女が俺を見上げてくる。