主任、それは ハンソク です!

「……すまん。俺さ、こういう飲み会の時って、いっつも盛り上げ役だから。でも、今日は落ち着いて飲めそうかな、って思ったら、つい嬉しくて」
「……はぁ」

 嬉しい、のか。
 でも、嬉しいからって人を嗤うのは人としてどうなんだ? なんて、普段の私では考えられないような不穏な思惑が頭を覆いつくした、その時。

 ゴトリ、と軟骨の三種盛り合わせの一皿が置かれた。鈴原主任曰く、ここのイチオシの一つ、だそうな。他にも、ゴトゴトとごつい陶器に乗った焼き鳥や、豆腐サラダなんかが所狭しと置かれていく。

「すいません、飲み物、追加ね。それと同じでいい?」
「あ、はい。同じで、いいです」

 伝票に書かれたミミズのような文字を見ているうちに、なんだか私もどうでもよくなってきた。そろそろ一杯目の酔いが回って来たのかもしれない。不意に心と無関係な言葉がするりと零れ出た。

「私、今日が初めてなんですよ、飲み会」
「は?」

 主任が驚いたように私を見るから、それなりに訂正は入れる。

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