主任、それは ハンソク です!

「……だとしたら。今の仕事こそ、お前さんにとっては天職じゃないのか」
「……へ?」

 たぶん私は、今度こそ笑われるべき阿保面をしていたはず。なのに主任はくすりとも笑わず、真剣な目つきで私を見ている。

「お前さんの持つセンスと技術は、いわゆる玄人はだしってヤツだと俺には感じた。だから、とにかくお前さんが思う通り、思いきりやってみてくれないか? 失敗しても構わない。責任は全部、俺が持つ」

 夢でも見ているんだろうか。それとも、すごく酔っ払ってしまったとか。だって、こんな、こんな都合のいいことって、あるわけがない。

 私は主任の切れ長な目をぼんやりと見つめながら、夢でもお酒でもどっちでもいい。それならそれで、ずっと醒めないでいてほしい。そんな馬鹿げたことを思っていた。
 
                  *

 主任の肩越しに、三日月が綺麗な弧を夜空に描いている。居酒屋の前には私たちの他に二次会の相談をしている他の客もいて、ごった返している。

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