主任、それは ハンソク です!
6 / 主任、私はどうすればいいんでしょう
「できたか? と、とく、得野」
ちらっと、主任の視線が私の胸ポケットの辺りを掠めた。大丈夫、今日はちゃんと忘れずつけてますよ、名札。
「ちょっと、慣れるまでは、難しいかも、しれませんけど」
主任が私にそれの作成を言い渡したのは1時間ほど前。例の旬彩フェアの売り出しポスターのたたき台作り。えーっと、たたき台は「とりあえず作ったもの・試作」の事(販促用語の基礎知識より)。
1時間後に行われる全体会議に、最低3案は出したいと言われている。
「やりづらいか?」
主任が心配そうにデスクに手をついて、背後から覗き込んでくる。
「慣れてしまえば……、たぶん、そうでもないんでしょうけど」
今回の使用ソフトは、いつものポップ・スターでも、長年個人的に使ってきたエルド社のイラストレーションやフォトショットでもない。この業界で販促キット制作には外せないといわれている、ラベル・メイカー。