主任、それは ハンソク です!
でも、エルド社のプラットフォームに慣れてしまった私には、まったく違う概念のせいか、本音を言えばかなり苦戦を強いられている。
頭の中には既に3案のイメージが仕上がっているのに、件のソフトではどこをどうすればいいのかさっぱりわからない。まだエルド社のソフトと似たものであればいくらか勘も働くのだろうけど、正直まったく見当がつかなくて、いたずらに焦るばかりだ。
「もしなんだったら、手書きでもいいぞ」
「手書き、ですかっ」
私は咄嗟にすがるように主任を見る、も。
思いのほか、顔が、近い。
主任も面食らったように、私を見ている。
慌てて、お互い体を引いた。
「あ、……ああ。というか、たたき台だから、むしろそれで充分だ。いや、それで俺が絶対納得させるっ。どうだっ!?」
はいっ! と私は即答していた。
その時、主任が少しだけ目元を緩めると、もう片方の手が私の肩に置かれた。
「期待してるぞ、得野」
普段からは想像もできないほど低くて優しい主任の声音に、私の心と体の芯が震えていた。