主任、それは ハンソク です!

 とぼとぼと部屋に戻ると、山積みの書類とにらめっこしている主任の姿に出くわして、思わずギョッとした。何となく、もう戻ってこないような気がしていたから。

 いや、違う。今日はもう合わなくても済むように、って心の中で願っていたから。

「これから一件、打ち合わせが入った」

 パソコンの画面から顔を上げることもなく、淡々とそう言い放つ主任との距離が、なんだかとっても遠く感じる。

「……あの」

 主任は変わらず、モニタをにらんだままだ。おずおずと私は口を開く。

「色違いの3パターンができたので、商品課と販促のフォルダに入れておきました。確認、お願いします」
「ああ、もう見せてもらった」

 なんか、声のトーンが低い。イマイチだったかな、あれ。

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