みんなに繋ぐ、全ての想いをここに
「ああ・・・・・・わかってる」

「いい?美杏、本当ならすぐに帰らなければならないのよ」

「わかってる。ちゃんとわかってんだよ。でも・・・・・・あの屋敷は、退屈なんだ」

あの時のことを思い出すと、今の思い出とどうしても比較してしまう

今と比べて、屋敷に引きこもってた頃の記憶なんて言うまでもなく

ちっぽけだ

今の思い出は濃ゆすぎんだ

だから、これ以上ここにいると・・・・・・別れが辛くなるのは目に見えている

それも、最悪その別れさえ告げず、ただ忽然と姿を消す形になるかもしれない

だから・・・・・・それならいっそのこと

覚悟を決めて、これ以上情が移る前に

ここから、出ると決めた

「美杏・・・・・・大丈夫よ」

「リーナ?」

ベッドにうつぶせになっていたあたしは、体を起こした

そこには、悲しそうな顔なのに、口元には薄く笑みを浮かべているリーナが

高位精霊の姿で

リーナは、ふっとあたしの体を細い腕で包み込んだ

それは、まるでお母さんのように温かくて

「大丈夫よ、私がいるわ」

「・・・・・・っ、別に、寂しくなんかねぇっつーの」

「正直になりなさいよ。あの子達のこと、好きなんでしょう?・・・・・・中でも、零にはちょっと、特別な感情を抱いてたり」

「特別な感情?」

「美杏には、まだ早すぎたかしらね。そんなことを想う必要も、機会も、そんな人さえ現れなかったから・・・・・・」

何かを知っているかのような口調のリーナ
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