みんなに繋ぐ、全ての想いをここに



「はーい、今日は転校生を紹介しまーす」

担任の先生が、朝のホームルームを終えた

あたしは、本来転校生が感じる不安とは別の不安を抱えていた

ようやく会える

またあたしを、受け入れてくれるだろうか

「はい、それじゃあ入ってらっしゃい!」

ふぅ、と一息ついて、あたしは目の前の木製のドアを開けた

教室に足を踏み入れると、あたしの銀髪についてヒソヒソと話すような声がきこえる

いい、無視だ

ようやくこれた

彼らが死んだ後に、あたしは調べに調べて

だからやっと──────

「はい、自己紹介を」

教卓の横まで来ると、先生からチョークを手渡される

白いチョークで、黒板に名前を書いた

「─────美杏です。よろしく」

すっとお辞儀をする

可愛いだとか、スタイルいいとか変な声も聞こえるが、気のせいか

「はい、ありがとう。美杏さんは・・・・・・零くんの横が空いてるわね。連れていってくれる?」

「はい」

そして、彼は近づいてきた

濃紺の髪に瞳

全てが懐かしい

そしてその後ろで固まっている、千聖たち

やっと会えた

「俺は零。よろしくな」

「・・・・・・ああ」

涙が溢れそうになり、あたしは下を向く

「どうした?」

心配そうに気遣う声が上から聞こえる

ばかだ、あたし

笑って再会できるかなって、思ってた

だけど、こいつらはもしかしたら、前世の記憶を持っていないのかもしれない

逆に持ってないと考えるのが自然だ

なんて自嘲気味に笑って

あたしは再び、顔を上げる

覚えてないなら、今から作ればいい

「美杏だ。これからよろしくな・・・・・・零」

いいや、零だけじゃない

いつか願った

魔法のない、平和な世界でみんなで暮らせればと

あの時の魔法の効果は、今でも続いているらしいな

「千聖に翔太・・・・・・それに春も」

名前を並べると後ろでか僅かに驚い顔をする三人と零

お前らが覚えてなくても、あたしはしっかりと覚えている

だから

──────思い出すまで、あたしはずっと付き合ってやるからな
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