死にたがりな彼女
普段なら3時は昼寝の時間。
昼寝をせずに遊んでいたからだろう、ソウェルの目がトロンとしている。
メモ帳をポシェットに戻して、ソウェルは僕の手に、また小さな手を絡ませてきた。
心なしか、身体も寄せて。
僕はしゃがんで、ソウェルに背中を向ける。
「乗りなよ、ソウェル」
誘惑に勝てなかったようで、ソウェルは日傘を畳むと僕の背中にその身体を覆い被せてきた。
ソウェルの脚に腕を絡めて、負ぶってやり、僕の持っていた黒い日傘をソウェルに託して立ち上がった。
背中に感じる、小さな重み。
ソウェルは普段の自分とは随分と違う目線の高さに、眠たそうに、それでも楽しそうな声を上げた。
「高い!シーファはいつもこんな世界を見ているのね」
「そうだよ」
「いい眺めだわ」
暫くソウェルはそう呟いて僕の目線と同じ高さのその景色を、珍しそうに眺めていた。
「高い場所から見る景色は素敵ね」
「ナントカと煙は高い所が好きだと、日本の国では言うみたいだけどね」
「ナントカって何?」
「それはね、…」