死にたがりな彼女
言いかけたとき、僕たちの目の前を大きな物体が墜落してきた。
何かが砕けるおぞましい音と、共に。
それは後3~5mほどの距離。
ソウェルを背負わずに歩いていたら、きっと僕たちはこの物体の下敷きになって、死にはしないものの怪我をしていたことだろう。
迷惑極まりないその物体は、どうやら僕たちが歩いていた道の右手にあるホテルの最上階から降ってきたようで、僕は窓の開いた最上階の部屋を見上げた後に、足元に転がる塊を眺めた。
「この人、レイチェル=アーバンじゃない?」
耳元に届いた声に、僕はその、顔と判別しにくくなってしまった顔を眺めた。
「……言われてみればそう見えなくはないけど…」
何せ石畳。
土ならまだ首の骨がへし折れた、だとか顔を少し打っただけ、だとかで、人の顔の判別に困ることはないだろう。
しかし、石畳。
ぶつかれば最後、人間の高が知れた皮膚と骨の強さではこの石畳に適うはずもない。
壊れるのは、人間のほうだ。
砕けたというよりは、元々そこに顔があったのかさえも、元々丸い形をしていたのかさえもわからないほどその肉の塊は潰れていた。
髪をぐしゃぐしゃに乱しながら、骨の砕けた場所から脳みそが赤い液体と、油のようにヌットリとした液体を吐き出し、石畳の窪みを流れていく。