死にたがりな彼女
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【消えそうな彼女】
夕日がだいぶ傾いて海の中に落ちていく頃。
僕たちは漸く海へとやって来た。
僕の脚は久しぶりに酷使した所為で疲れが溜まり、いつも通り動くことはなくどこか筋肉痛を覚えていた。
ソウェルは海がよほど楽しいのか、あっちこっち走り回っては滅多に見ることはない海を堪能している。
岩場へ行ってみたり、洞窟へ行ってみたり、はたまた少し遠くから眺めたり、水に少し靴を濡らしたりして。
こういうときは、子どもみたいだと思う。
いや、実際子どもなのだけれど。
僕はそんなソウェルを少し離れた砂浜から眺めていた。
沈み切らない夕日が真っ向から照らしてくる所為で、目が痛い。
目をシパシパさせながらソウェルを眺めていると、急に風が強く吹いて、ソウェルを一瞬、見失った。
「ソウェル!」
僕は走って行って、チカチカする目を押さえながら手探りでソウェルの腕を掴むと抱き寄せた。
塩水が、僕のブーツを舐めていく。
ソウェルは僕のお腹に顔をぶつけて、少し驚いたように僕を見上げた。
「なぁに?シーファ」
逆光の所為で見えにくくなったソウェル。
太陽に目を焼かれた所為で見えにくくなったソウェル。