死にたがりな彼女


目玉はとっくに抉り取られて魚に食べられてしまっている。


僕たちはまた厄介な事に巻き込まれる前にその場を後にした。


水死体から離れて暫く歩いていると、箱に魚を大量に入れて嬉しそうにしている男と出会った。


どうやら彼はずっと釣りをして、今日の夕飯を釣っていた様。


上機嫌な彼は自分の功績を一刻も早く誰かに伝えたくて仕方なかったのだろう、僕たちを見ると気さくに話しかけてきた。



「やぁ、君たちも釣りに?」



「いや、散歩だよ。沢山釣れたみたいだね」



「いつもはこんなんじゃないんだけど、今日は特別さ。あぁ、これなんて見てくれよすごく大きいと思わないか?」



「あぁ、凄いね」



「畑で取れたミミズが、こんな大きな魚に代わるなんて…!」



男は嬉しそうに魚を掴んでうっとりと眺めた。


そして、中位の大きさの魚を二つ、僕たちに差し出してきた。


きっと話を聞いてもらえて嬉しかったのだろう。


しかし僕たちは揃って首を横に振ると丁重にその申し出を断った。


男は残念そうにしながらも、さして気を悪くした様子もなく、荷物を肩に掛けると笑いながら手を振って家路へと急いでいった。


その背中を眺めていたソウェルはポツリと漏らす。



「…人間の肉は美味しいのかしら?」



「どうだろうね、とりあえず食物連鎖って怖いね」



「人が人を食べるのを、カニバリズムというのよ」



「直接食べては居ないけどね」



「……まぁ、素敵な夕食になるといいわね」



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