死にたがりな彼女
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【臆病な彼女】
朝になって、僕たちの旅はそろそろ切り上げようかと言う話になっていた。
珍しく長い間外に居た所為で、ソウェルも疲れたのだろう。
田舎町の電車から、メルヴィー街へと出て、そこから電車を乗り換えて、僕たちは懐かしい我が家へと向かった。
たった二日、居なかっただけなのにこんなにも家が恋しくて、僕は暫く(2~3年ほど)は外に出ず、太陽にも当たらずあの分厚く黒いカーテンに囲まれた、一体何冊の本があるかわからない書斎で、飽きるほど本を読んでいたいと切に願った。
外はもう懲り懲りだ。
神経が磨り減るし、気が張り詰めていて息が詰まりそうだ。
自分の家へと向かう電車の中で、僕はそんなことを思っていた。
ソウェルのほうは来た時とはうってかわって、窓の外に広がる木々を、その金糸に似た髪を風に遊ばれながら眺めている。
心地よい、緩やかな振動。少し冷たい、緩やかな風。
メルヴィー街であった出来事が嘘のように、穏やかなひと時だった。
まるで遠足のようなひと時に、ソウェルは楽しそうに笑っていて、それを見た僕も、顔の筋肉が緩んだ。