死にたがりな彼女


何の悪意もなくそう尋ねた。


僕は視線をソウェルに戻して、頷いて返す。



「君には似合わなさそうだね」



勿論よ、そう言いたげにソウェルは紅茶を飲み干すと立ち上がって、近くを詮索し始めた。



「あまり遠くに行ってはいけないよ」



僕の声に、何処か遠くのほうから返事が帰って来た。…遅かったようだ。


カップを水筒へと戻して、僕はソウェルの荷物を片手に彼女を追いかける事にした。


此処ならまだ僕は比較的、まともに動くことが出来る。


ソウェルは一つの首吊り死体と、糸が切れて落ちてしまった、操り人形のような形で土の上に無造作に転がる死体を眺めていた。


土の上に投げ出された死体は暫く吊られて、腐蝕し始めてから落ちたのだろう、腕や脚が可笑しな方向へと曲がっている。


そしてその上を悠然と進み群れを作っている、蛆虫。



「ソウェル」



僕は彼女を呼んだ。



「こんな物が身体の上を這いずり回るなんて厭だわ」



そういってソウェルは僕の脚にその小さな身体を摺り寄せてきた。



「違う方法を探そうか」



ソウェルはコクン、と頷いて僕の手に、小さな手を絡めて歩き出した。


風が吹く。


彼女の輝く金糸のような髪と、ピンク色のスカートと、僕の外套(マント)とこの森に敷き詰められている首吊り死体たちを揺らした。










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